
ガラードのオートチェインジャーにパイのアンプ、それから、スピーカーはタンノイにしようか、ホワイトリィ(ステントリアンの前身)にしようか、実際に音を出して聴いてみるのが、一番。 どちらも戦争中か戦後すぐに製造された古いものだけれど、驚くほどリアルで活き活きした音が出る。 色っぽくて、香りがする。 家庭で聞く音には、グッドリプロダクションがかかせない。 歌手がプレイヤーの傍らに立ってささやきかける。 贅沢な気分、くつろげる時間。 そういうもののために音楽はあるんじゃなかったっけ。 弾むリズム、声にざらりの肌触り。 理屈だらけの音が、原音に近づけば近づくほど、嘘っぽく聞こえてしまうとは反対に。 音楽は本能にはたらきかけるもの。
ありふれた蘭Ronette社製のクリスタルカートリッヂに、英PYE社の2W電蓄アンプ、それに英WHITELY社製の10cm径ユニット内蔵エクステンデッドスピーカー(2.75Ω)。 これだけで、官能にはたらきかける音楽が部屋を満たす。 大きな装置では絶対に真似の出来ないチェット・ベイカーが、クリス・コナーが、シュザンヌ・ダンコがふっとそこにいる。 寝そべりたくなる。