2011年06月30日

デュオド物語 2

ユニットの年代による変換
英バーカー・ナチュラルサウンド・リプロデューサー社製『デュオド』スピーカーユニットの歴史については謎に包まれているとすべきであります。 確かにインターネットで調査すれば、それなりの資料は見つけることが出来ます。 しかしそれらの情報には何の確証も無いのです。 例えば戦後アメリカに渡り、米ハートレー社を創立したスコットランド人H.Aハートリーと協力関係にあったとか、真に英国的な心を体現したスピーカーである等の事柄も、果たして何処までが真実であるか確かめる事は出来ないのです。 これが英デッカやEMI等のメジャーメーカーであるなら、何らかの製品に対して、歴史的な考察を行うことが可能ですが、バーカー社の場合は、今後の調査を待たなければ本当の所は見えてこないと思います。 しかしこの様な資料の中で信じるに足りるのは、バーカー社のスピーカーユニット『デュオド』が、1940年代後半ごろその姿を表し、少なくとも1960年のHiFi YEAR BOOKにその姿をとどめているという事実で、それ以後何時頃まで作られて行ったのかは判明しませんでした。 仮に1965年辺りまで発売されたと仮定すると、15〜20年位は発売されていたのかもしれません。 この位一つのスピーカーを作り続ければ、当然年代によって形が変化して行きます。 しかしデュオドの場合、大幅なモデルチェンジ等は行っていないようで、外観はマグネットの大きさが変化した位の様です。 グレイにあるものは、初期モデルに相当するものだと言われております。 その証拠に1958年型はマグネットが丸くなっていますが、これは寸胴です。 

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英GRAMOPHON誌1950年6月号広告より

写真で見た限りでは明らかに初期モデルの方はマグネットが大きく思われます。 だがマグネットが大きいから磁力が強力であるとは限りません。 その理由はマグネットの鋳造技術が急速に向上したからで、時代が進むに従ってより小型のマグネットでも、以前の大型並みの磁力を得ることが出来る様になったからです。 この二つのタイプのユニットが同時に存在していたのが、1950年代の初め頃でありましたが、時代が進むと大きなマグネットのものは少なくなり、小型で強力な磁力を持つものが主流になっていくのですが、ステレオ時代に入ると更にその傾向は加速されて行くことになります。 これはアンプリファイアーの発達によるのですが、理論的には小型であっても必要な磁力が確保できればよく、何も必要以上に大型のマグネットを背負う必要はありません。 無駄以外の何ものでもないからです。 しかし無駄は無駄なりに意味がある様に私には思えてなりません。 それは同じモデルのユニットでも初期型の大型マグネットを持つものと、小型で同じ磁力を持つものと比べた場合、音の伸びや音楽的表現力の自在さと強力さと言う点で、明らかに初期モデルの方が良いと言うことをしばしば聴くことがあるからです。 初期モデルにあった、ある何かしらのものが、決定的に不足していると感じられてしまうのです。 デュオドの場合にもこの様な現象があるかもしれない。それゆえ我社ではデュオドの初期モデルに相応と思われるものを集めております。 又スピーカーシステムとして完成させるという言わば作り手の立場から見ればやり様によっては、欠点がそのまま長所として転換出来る様なものの方が、やっていて面白いということもあります。 往々にして初期型から最終モデルに到るまでの過程において、初めはピーキーかつエキセントリックであったものが、次第にマイルドで扱いやすいものに変化して行くということがあり、魅力と言う点に関しては断然初期モデルの方に興味はわきます。 ステレオ時代のユニットも又モノーラル時代の初期モデルとは又違った魅力があるはずで、決して悪いものではないはずです。 だがそれは初期モデルを知った上でなければ使うことは難しいと考えております。 何しろデュオドというスピーカーユニットについては何もかも謎だらけなのですから。 つづく
以上T氏

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英DECCA社初LPレコード発売予告GRAMOPHONE誌1950年6月号

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