SHURE M44 あなどることなかれ 5
M44にある秘密とは、その周波数特性がレコード録音のロール・オフ/ターン・オーバーと良く似たはたらきを持っていることなのです。 カマボコ特性はそのためにある。 そのカマボコ特性をたたき台にして低域と高域を伸ばすには、フォノイコライザーに相当するものが必要になってきます。 その役割を担っているのが、レコードプレイヤーであり、当時のトーンアームでした。 これらの力が反応しあうとシュアーM44の聴覚的再生レインジはおおむねフラットになる。 有体にいえばミミズみたいなもので、そのままでちぢこまっているのが、プレイヤーとアームにより伸ばされている、そんな感じ。 しかも、もともとがカマボコなので中域が痩せることはない。
このように見てくると、M44がHi-Fiリニアコンセプトの装置でははたらかない理由がわかってくるはずです。 リニアHi-Fiでフォノイコライザーやプリアンプのはたらきをみると、ただカートリッヂの周波数帯域が進む通路に過ぎず、可変などはほとんど行わない一直線の通路になっています。 そうなるとカートリッヂの再生周波数帯域の広さがそのままイコール再生音となってしまう。 これではM44はその個有力を発揮することが出来ずに、カマボコ型の聴覚特性がそのまま出てしまう、結果レインジの狭い安物と見なされてしまった。 これは今もほとんど同じで、グレイのオフィスで試聴するお客様のほとんどが使用カートリッヂはM44と明かすと、驚かれるのです。 それも当然、現代のレコードプレイヤー、フォノイコライザー、プリアンプはレインジの広いものしか対応できないからです。 これらの再生音からは音色や音楽力などという言葉は出てこない、色付けの無い音だから良いでしょう、と平気で言う人が相も変わらずいるから困ってしまうのです。 そんなこと言っていると、音はどんどん面白くなくなっていくのです。 これについては、またいつか書きます。 結果としてM44がまともに鳴らないオーディオシステムはレコード再生において、力の無い、可変力を持たない、聴き手を勘当させる音楽力の無いシステムである、ということになる。 はっきり言って、SHURE M44で鳴らなければ、どんなに高価なカートリッヂを使用してもダメです。 つづく
以上T氏

以上T氏