また夜歩く
僕が棲む銚子は太平洋に突き出た半島で風が強く、
T氏が言うには「物の怪など吹っ飛ばされて居つけもしないところ」。
小さな町は空襲で散々な目にあい、
古い港町は木っ端微塵に吹き飛ばされてしまった。
それなのにこの古い都、あんなにいろいろなことがあったのに、
こうして廃れることもなく、青い柳もどこ吹く風で残っている。

ダビュシ小組曲にあるメヌエットが、耳の中で鳴り始める。
暗い丸太町をバスで行く、
呑み屋のちょうちん、
骨董カメラ屋の看板、寺の門、
残像になって過ぎていく。
夜のめまいが待っている
気配ってなんだろう。
そこに入り込んだ僕を外から見ていることだろうか。
だけど目に見えないからずっと気になっていた。
ちょっとした隙間のようなもの。
ひとの気配、忍び寄る気配、ただならぬ気配
北山の料理屋に連れて行ってもらう。
初めてお会いしたのに、話ばかりしてしまい、明石の鯛とキャベツの花は憶えている。
優しい人たちとの時間はすぐに過ぎた。
次の日の朝は金環蝕だったから、天邪鬼はゆっくり寝て過ごして夜が来るのを待った。
暗い暗い丸太町を西に向かってゆっくり歩いた。
O君と40年前に一緒に歩いた道だった。
T氏が言うには「物の怪など吹っ飛ばされて居つけもしないところ」。
小さな町は空襲で散々な目にあい、
古い港町は木っ端微塵に吹き飛ばされてしまった。
それなのにこの古い都、あんなにいろいろなことがあったのに、
こうして廃れることもなく、青い柳もどこ吹く風で残っている。

ダビュシ小組曲にあるメヌエットが、耳の中で鳴り始める。

呑み屋のちょうちん、
骨董カメラ屋の看板、寺の門、
残像になって過ぎていく。
夜のめまいが待っている
気配ってなんだろう。
そこに入り込んだ僕を外から見ていることだろうか。
だけど目に見えないからずっと気になっていた。
ちょっとした隙間のようなもの。
ひとの気配、忍び寄る気配、ただならぬ気配
北山の料理屋に連れて行ってもらう。
初めてお会いしたのに、話ばかりしてしまい、明石の鯛とキャベツの花は憶えている。
優しい人たちとの時間はすぐに過ぎた。
次の日の朝は金環蝕だったから、天邪鬼はゆっくり寝て過ごして夜が来るのを待った。
暗い暗い丸太町を西に向かってゆっくり歩いた。
O君と40年前に一緒に歩いた道だった。