2012年09月30日

蘭フィリップス社AD9710音響迷路型エンクロージャー 3

右写真、キャビネット底部に取り付けられた木製角筒(矢印)が共振イコライザーです。RIMG0029このイコライザーの働きは3つあります。 第一は、底板から伝わってくるエンクロージャーの共振をコントロールすることで、これは回転させることで行え、緩めれば共振がゆるやかになり、締めつければ締まってくる。 それによってエンクロージャーの共振を可変出来ます。この四角い箱は底板に十字形に切られたMDFの四方に位置させれば全体アース(バランス型)、外せば(アンバランス型)にできるし、その位置によって程度も可変出来ます。 これは実際のヒアリングで決定すれば良いわけです。  第二は、この四角いイコライザーは内部が中空になっており、ここに導かれたエンクロージャーの共振はここで空中に放射され余分なエネルギーを逃がすことが出来ます。 これは空中アースとして働き、しかもその位置によって空中アースの仕方も変わることになります。 第三は、スピーカーユニットの動作により、エンクロージャー全体に再生音が回り込んできますが、床との反射において乱れが生じるのを拡散し、音を整えます。 本機の再生音は、ジャズの再生では昔のJBLディケイドの音をもっと上品にしたものであり、切れ込みの自然さはJBLディケイドより数段勝っています。 歯切れが良いが切れすぎない。 アコースティカルな表現力はこの大きさならではの全方向への拡散力が大変強く爽快です。 

RIMG0003

クラシックについては、ピアノの大音量再生にも充分に耐える粘り腰の音が聴けますし、ホルン等の楽器の再生はスピーカーの存在を忘れさせてくれます。 その音はDECCAアーク型スピーカーと似たタイプの音場感です。 弦の再生は、やや分析的で、こういう風に弾いているということを丁寧に聴く人に解説してしまうところもあり、しっかりと存在感を現してくれます。 トータル的な評価をすれば、渋い低音と輝き(銀色の)、中高音のバランスがとてもタンノイの音に似ているのには驚かされました。 しかし決定的に差が出るのが低音部の表現で、このスピーカーがどこまでも入力信号に対して忠実に責任を果たそうとしますが、タンノイの場合は途中で放り出してしまう。 いわばタンノイはボケ担当で本スピーカーはツッコミタイプと感じられます。このあたりがフィリップス社のポリシーだと思います。 どうやらARの音を目指したつもりがタンノイ的になってしまったようですが、これはこれで良いとしなければなりません。 何しろこの時代のユニットには決定版的な設計図はなく、すべてはそのユニットを使う人にかかっているからで、当初の目的とするものとは異なったとしてもそれが良いものであれば問題ないはずです。
この項おわり 以上T氏

こういう装置から流れる音楽、気分が良い。 気分が良いから、この数日、リストを書くのにこの装置で聴いている。 なぜなら聴いているうちに自然と書きたくなることが見えてくるから。 大きくもなく小さくもない、中型装置は神経質にならなくて済む。 かけているのは、ラヴェルの弦楽四重奏曲、ボロディン四重奏団が1958年ストックホルムで吹き込んだLP。 いつもよりもずっとのびのび、すくすくと曲を育てているのが見えている。 そう、この音だとスピーカーに体を向けなくても、気軽にすっと入っていける。 ラヴェルがコンテンポラリのスタイルで奏され、そこに叙情が生れている。

posted at

2012年09月

2012年09月29日

2012年09月28日

2012年09月26日

2012年09月24日

2012年09月22日

2012年09月19日

2012年09月18日

2012年09月16日

2012年09月15日

2012年09月12日

2012年09月09日

2012年09月08日

2012年09月06日

2012年09月05日

2012年09月03日