2013年09月29日

カートリッヂとアームの真の姿 最終回

SME3009 S2 IMPROOVED 登場
アームという存在そのものをマイク・プリとみなすと、どうしてもSME3009 S2 IMPROOVED(以下S2 IMP) について考えざるを得なくなります。 このアーム、従来のヴィンテージアームとは縁もゆかりもない隔絶した存在です。 利得もゲインもないカートリッヂの持つフォノモータにも一切関与しない、働かないアームなのです。 よく言えば独創的なのでしょうが、果たしてアームと呼べるのかどうかはなはだ疑問です。 カートリッヂを吊り下げる金属パイプにしか私には見えないのです。 しかし、このS2 IMPのもたらした再生音こそ、アーム固有の力と働きを私に認識させるきっかけとなったのも確かです。 シュアM44を取り付けて試聴すると、改良?前のモデルであるSME3009 S2の音とは似ても似つかぬ酷い音が出てきたのですから。 なぜSME3009 S2であれほどオーディオ機器全体を呼ぶような高エネルギーの音が得られるのにS2 IMPだと萎れた花みたいな貧相な音になるのか、それが判らない。 まずTD124が良くないのか、それはない。 TD124は今までさまざまなアームを取り付けてきたけれど、S2 IMPのような音は出したことがない。 ではシュアM44がダメなのか、これもない。 良い品とも思えない我国のアームに使ってもそれなりの音が出てくれていたのですから。 となれば問題があるのはS2 IMPという結論に到る。 S2 IMPの再生音を聴いて気付く現象の数々は、オーディオというものの在り方がそれ以前のものと比べて劇的に変化した結果ではないかと。 S2 IMPが発売された年は1972年。 この年にはTD124もガラード301も販売はとっくに終わっている。 ほとんどのフォノモータがベルトドライブに変わってしまっているのです。 さらにシュアM44はベストセラーの座をV15モデルにとって代わられている。 つまりこう言うことだと思う。 初めにフォノモータが戦線を離脱、次にカートリッヂが撤退。 こうなると反応力で働くアームは力を発揮することはない。 SME3009 S2だけでは、いくら頑張ってもこれまでのような再生スタイルは無理。 フォノモータとカートリッヂが反応力を捨ててしまったのであれば、アーム自体もわがままに自分勝手でもかまわない、いや、双方がシステム全体としてはうまく行く。 SME社がそう思っても何の不思議もありません。 ここに到ってレコードに存在する音は音楽を表現するためにあるものではなくなってしまったのです。 大事なのはノイズを出さないこと、周波数レインジを広げること、それが重要視された。 サーフェスノイズやポップノイズ、または録音時に紛れ込んでしまうノイズ等が存在しなければそれが良い録音とされたのです。 この現象は次の段階へと進む、それはレコードから様々なノイズを拾いだすカートリッヂやアームこそが高性能であることの証明であるとみなしたのです。 つまりレコードの荒を探し出し、出してくれるカートリッヂやアームが優れた製品とされた。 ここに到ってオーディオ装置は音楽を作り出すものではなく、レコードの不備、欠点を暴きだすのに使われ始めました。それだけではありません、もっと罪なことがこの時代に起こります。 音楽とは程遠い高域と低域を平気でゴリ押しするのを良しとする風潮です。 フォノモータはどうしていたかと言えばひたすら沈黙を守っていた。 静かに回転していればそれで良かった。 このようなオーディオのあり方は今も存在しているようで、阿部氏がヴィンテージオリジナルレコードを販売していた時、当店では何の問題も発生しないレコードなのに、ノイズが出るというクレームがあったことを思えば納得できるのです。 ここで疑問が出てくる、それはS2 IMPが発売された時なぜ誰も文句を言わず喜んで迎い入れたのでしょう。 欧米ではすでにステレオ初期に録音されたレコードは過去の遺物であると考えられていた。 これは皆様が不思議と思われるかもしれませんが、本当だと思う。 現在の欧米のオーディオ機器制作者は、彼らの父、祖父の行ってきたことに対してまったくといいほど無頓着です。 むしろそれを今になって勉強している情況にある。 それも我国のヴィンテージオーディオブームの影響を逆輸入して受け入れてからのことなのです。 だが、我国のオーディオ界は少し違っていた。 S2 IMPが発売された1972年あたりでは、ほとんどの人がヴィンテージ時代のオーディオ製品がどの様なものであったかは知らなかったのです。 それゆえ、S2 IMPのもたらす音を手放しでほめてしまった。 ここで注意しておきたいのはSME3009 S2は10年以上に渡って基本型を崩さず製造されていたという事実です。 この年数がそのままステレオ時代にはいってオーディオ装置が反応力で動いていた時代であり、S2 IMPが発売された1972年こそ、反応力の時代の終焉を告げる年だったと言えるでしょう。 S2 IMP以後のアームではほとんど反応力を蓄えることはなかった。 結果、音の良し悪しのモノサシは、音の生々しさということになる。 だが、ここでアーム本来の働きであるマイク・プリ的な可変力や調整力というはたらきが伴えばそれでも良かったのですが、この生々しさにはそれがなかった。 そのためサーフェスノイズもポップノイズも音と同様、生々しいものになったのです。 本来であれば可変、調整され良きものに転化されるべき性格のノイズまでそのまま出してしまう。 音とノイズを同じレベルで拾ってしまう。 それではヴィンテージ時代のレコードをかけてもノイズが気になってしまうだけです。 ヴィンテージ時代のレコードはアームによる可変、調整を前提として製造されていたのですから。 ここまでS2 IMPの音について書きましたが、その本意はカートリッヂやアームの本当の働きについて知ってほしいからです。 それはアナログオーディオ再生の根本、カートリッヂの針がレコード盤をトレースしている限りノイズは発生するものであるという大原則を改めて認識して頂きたいのです。 カートリッヂの針先には相当な圧力がかかっていることはご存じのはずですし、レコードのミゾは凸凹である、この二つのことを普通の頭で考えれば必然的にノイズが出るのは当たり前なことなのです。 どの音を採るか(取るか)を決定し、いかにノイズの有効利用をするか、先人たちは知恵を絞ってあらゆる試みをしています。 機構や振動の処理をいかにするか思考錯誤して切り拓いていき、暗号を可変し調整し次のステージにいかに届けるか心を砕いていました。 SME社の3009/3012 S2はヴィンテージモノーラル時代のオーディオの基礎を形造った創始者たちのアイデアを集約発展させて製作せられた品です。 しかしSME社はS2 IMPでそれらすべてを投げ捨ててしまった。 その問題の過程で何が試みられ、何が行われたか知ることは出来ません。 ただ言えることはS2 IMP以後に作られたリニア時代のアームのほとんどが多かれ少なかれS2 IMPの影を背負っているという事実です。 この項おわり
以上T氏
参考ページ
TD124とSME3009 S2の整合 3
シュアーV15 TYPE靴鮑D阿い討澆襪
シュアーV15 TYPE靴鮑D阿い討澆襪 2
オーディオ統一理論 9

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