2014年01月30日

TD124Mk.2 その音の世界 8

Mk.2に聴く定位と方向
ステレオ再生時の定位というものを勘違いしている方はすこぶる多いようです。 定位あるいは音の存在感を確認し、まるで目視しているかのように認識するのを良しとするのはどうでしょうか。 確かに『ほら、歌手がそこに立っているでしょう』は痛快なことではあります。 しかし、ステレオ鑑賞の本質は響きにありますし、定位よりも音楽性にあります。 響きはあいまいであり、うつろうものです。 さらに定位に固執するあまり、音そのものが膨らんだり縮んだりするのを極端に嫌うのはどうでしょう。 実際の演奏会では、響きによって楽器の存在は膨らんだり小さくなったりします。 もとより演奏者はみえているので、空想の目視をする必要もありません。 こうしたことを無視して、聴覚スクリーンに楽器群を妄想しようと躍起になっても仕方のないこと。 定位を聴き定めようとすればするほど、ステレオ再生から遠ざかっているのです。 こんなさかしまな行為がステレオ誕生以来今日まで受け継がれています。 原因は二つ、ひとつはステレオ再生機器を販売しようとすれば、定位を売り物にするのが当然でしょう。 もうひとつはステレオ再生とは何かということを本気で考えたことがないからです。 さらにもうひとつ言わせていただければ、現代人の悲しい性である、『視覚』こそがすべての感覚に先んじるという宗教にがんじがらめになっていることでしょうか。 ステレオを考案した創始者たちはその是否をあますところなく研究していたはずです。 そんなことお構いなしに、レコードであっち向いてホイをデモンストレイションして、ステレオ万歳とやってしまった。 売れるから良いのと、良いから売れるのとは違います。 

話をTD124に戻します。 
まず想像してみてください。
あなたは海岸に立っている。 
折しも沖合から巨大な波が押し寄せてきて、二百ヤードほど先の大岩を乗り越えようとしている。 あなたは引き潮の時にその大岩に登ったことがあるから波の大きさがどれほどのものか理解する。 波の高さ、そのエネルギの強さが判る。 乗り越えた波が大岩を激しく洗い、回りこんだ波が渦を巻くのが見える。 
これがMk.1の再生音のあり方で、大岩(主音)に対する付帯音(音楽的要素を多量に含む)が回りこみくるんでいく。 以前Mk.1が再生する音場は円筒形と表現したことがあるが、このことなのです。 したがってMk.1の音は主音がむき出し(裸)になることは滅多にありません。 もし裸の音で再生されるMk.1があったとしたら、調整不足か性能が不十分である証拠です。 Mk.1エンポリウム仕様に聴く深いナチュラルディストーションは、こうしたはたらきから生まれてくるのです。
これに対しMk.2の表現力はこうした方法を取ってはいません。
Mk.2の音はもっと近くにあります、あなたが立っている海岸の岸壁に打ちつける波です。 大波が岸壁に打ち砕ける時しばしば波しぶきが数メートルに達するのを見たことがありましょう。 大岩が遠くで波に飲み込まれる様子を目にするよりも、波しぶきをかぶるほど近くにいるあなたはダイレクトにエネルギーを体感するのです。 Mk.2によるステレオ再生で主音はMk.1よりずっとあなたに近いところに在ります。 よく見ると波は三つの要素からかたちを成しているのが判ってきます。 ひとつは波しぶき、ひとつは波の本体、最後に沖に引いていく波。 これを残響、主音、倍音に当てはめてみるとMk.2再生音の実体に似ているのです。 波しぶき(残響)によって、波(主音)の大きさとエネルギーの強さがわかるし、しぶきの方向によって主音との距離も感じ取れます。 波本体は主音そのものですが、岸壁に当たったその瞬間は停止(静止)状態となり、これが主音の定位です。 引き波は倍音成分であり、これが次の波とぶつかり合うと大きな参加k波を形成します。 これがハーモニクスです。 
Mk.2のステレオ再生では、主音に倍音成分が回りこむことなく分離し、次の音と合成することによりステレオ効果が上がるのです。 これは時に欠点になることもあります。 主音があまりに倍音と離れると音が剥きだしになってしまうからです。 こういう状態では、ステレオ的サウンドとして大きな効果が得られる反面、音楽的な面での音同士の連結力が弱まるために音が薄くなり平面的ステレオ再生に陥ることに注意しなければなりません。 賑やかで愉快な性向ですが人間的な深みが欠けるような感じでしょうか。 対応策はもちろんあります。 倍音成分が次の波とぶつかり合う時間をなるべく短くすること。 それをどのようにするか、という説明は単純に経験と手が成せる技によるしかありません。 勘と本能で導き出すしか方法はないのです。 つづく
以上T氏 

歌手がそこに立っているというより、歌手がいる気配がする、ほうが聴覚に訴える力は強い。

posted at

2014年01月30日