川を下る。
急な流れに変わってしぶきが散る、
冗談飛ばしていた船頭さんが
真顔になって竿で岩を蹴る。
額の汗。
しぶきが客に飛び、鳥たちや猿たちが
舟の騒ぎを見物している。
ぎいこぎいこ櫓のきしみ
大雨に流された跡が痛々しく残り、
深い淵に早咲きのサクラが映る。
見ず知らずの客も一緒に下ると
親しげになる。
肌で、香りで、水に浸した指先で春がやってきていると
告げている。
ピンまで残りのヤード数が表示されるというメガネ、
ウェアラブル端末。
スピーカーの背面に音場を広げるのと、
同じ胡散臭さが匂う。
この先、ひとの五感が退化していき、
また違う感覚が具わる