2014年08月31日

回転する速度 3

ストロボパターンのワナその2

いかにストロボが規定回転数を示していても、実際はほんのわずかのズレが生じています。 プレイヤの精度が上がり、装置全体が反応するようになってくると、こうした小さな不具合が如何に音楽を損ねているのか、よくわかります。 
こうしたズレに対してCONNOISSEUR社のA.R.SUGDENは、前回記したとおりセンタスピンドル軸受部とモータシャフト軸受部で対応しました。 プレイヤにとって一番重要な二箇所の軸受けに取り付けられたネジの締め具合でハーモニクスを整え、速度微調整ノブを注意深く回すと、潤いがあって伸びやかな響きが洗われて、ピントを合わせるように調整できます。 まずミクロの時間のものさしでも安定した回転質を確保したのち、速度を微調整してやるのです。 人間の耳は視覚や測定機よりもずっと上等に出来ていることをSUGDEN氏は痛いほどわかっていたのです。 回転速度による調整は適正に整備されたCraftsman-3を手慣れたユーザが使用して始めて可能になるのです。 よりよい再生を望むならば、これらのプレイヤシステムをユーザ自身が調整できるようにならなければなりません。 ヴィンテージ機器ではユーザの技量が要求されるのが当たり前のことなのです。 
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Connoisseur Type-B   センタスピンドル軸受   Craftsman-3 

Craftsman-3を例に書きました。 優れた音楽再生能力を具えたヴィンテージプレイヤが可能にしたスピードコントロールによる再生音を整える方法は、ベルトドライヴやDD式プレイヤには残念ながらあてはまりません。 これらの機器に組み込まれた電子制御部よる回転速度制御方式とは、回転の質の次元が根本的に異なるからです。 エレクトロニクス制御は以前も書きましたが、後手後手のものなので音色やハーモニクスをコントロールすることはできません。 人間の聴覚のスルドサからすれば、あまりに大雑把なのがエレクトロニクスです。 これらは定速回転を見かけ上維持するための補正回路にすぎません。
Craftsman3などによる、回転速度微調整ピント合わせ、これまで誰も言わなかった問題を暗示しています。
見かけ上の定速回転のなかには、さまざまな再生音のかたちがあるということ。
さまざまな音かたちのどれを選択するかは、ユーザの感覚にかかっています。 Craftsman-3ほどではないにしろ、名機と呼ばれるアイドラ式プレイヤには、こうした力が多かれ少なかれ備わっています。
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Connoisseur Type-B    モータシャフト軸受   Craftsman-3 

それではTD124はどうでしょう。 CONNOISSEUR社製プレイヤに比べてここが決め手という箇所はありません。 回転速度による再生の調整には、全回転系部の働きの精度を上げてから速度微調整ノブを回し聴覚で判断していきます。 ですから、CONNOISSEURほど端的に調整することは不可能です。 しかし、エンポリウム仕様のモデルではそれに近いことができます。 センタスピンドル軸受がプラスティック製だからです。 たしかにレストアされていない初期モデルでは、いかにプラスティック軸受であっても多かれ少なかれプラスティックの内周部に変形が見られます。 ですから普通に回転しているように見えても、実は安定した回転は得られていません。 プラスティックブッシング内周部のどこかが膨れていたりキズがあったりして、いわゆるネットリと回るさまを示せないでいます。 そういう状態ではCraftsman-3のように定速回転下の音ズレを感知することはできませんから、ユーザは速度微調整ノブを回してもハーモニクスや音色のピントを合わせられないのです。 それを適正な研磨と試聴を繰り返し軸受内面の状態をトリートメントすることにより、定速回転下における音ズレが感知出来るようになります。 こうして、TD124でも再生音のピント合わせと修正が可能になります。 ユーザが速度微調整ノブを回す調整により、ハーモニクスは格段に向上します。 これもストロボパターンを見て止まっているというだけでは判断できません。 あくまでもストロボパターンが止まっている箇所からわずかに、かすかに回して音を聴きながら調整するのです。 その際の再生音の違いは慣れてしまえば簡単にできることです。 時々プラスティック軸受けを安易に削り過ぎてスカスカになってしまっている個体があります。 スイッチオフでも長い時間回り続けますが、プラスティック軸受けの場合、これは最悪です。 このようになってしまった軸受けでは回転速度による調整は望むべくもありませんので注意が必要です。
過去においては、わずかではあるにしろ回転速度を変えてレコード再生するなんて一笑にふされたに違いありません。 しかし今は違います。 A.R.SUGDENという人物は世界で最初にMC型カッティングマシンを製作したエンジニアであり、ステレオ再生の研究にも深く関わってきました。 そういう人がホームユースのプレイヤの研究製作に熱中して世に問うたのです。 音楽の深みを再生しようと一生懸命にこしらえたプレイヤだというのが伝わります。 つづく
以上T氏

このあたりの話になって、ようやく音楽の血と肉、そして気配が聴こえてくるようになる。 リニアオーディオは音楽の骨と皮とスケールを再生しているに過ぎない。 

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