2014年09月24日

TD184 と タンノイ

TD184エンポリウム仕様がTD124(同仕様)に及ばないところがあるとすれば、音楽表現力にあるブレスの深さでしょう。 ある時期同じくらい深く出来ないものかと試行錯誤してはみましたが、バランスがくずれて曲想に対する反応力が偏ってしまい、結局失敗しました。 逆を試してみました。 ブレスの浅さ(あくまでTD124エンポリウム仕様と比べてのお話しですが)はそのままに、中高域の充実に焦点を絞って調整しました。 TD184はTD124エンポリウム仕様とは別の機種なのですから、独自の再生音を目指すのがたしかに自然です。 こうして新しい再生音を出してくれるようになったTD184エンポリウム仕様はスイス・トーンというより、英国製フォノモータのような音に近づいていました。 中高域のなめらかさ、リズム感の鋭さが向上したのです。 これは低音域の押しが後退して中音域を支える出し方をするようになったからで、コラロやコニサー社製トランスクリプションデッキに備わる特有の響きと共通するものを感じます。 タンノイのレクタンギュラー・ヨークなどを鳴らすとちょうどよいのではないかと、ふと思いつきました。

tannoy new york


1950年代以降のタンノイ社製スピーカは、一言でいえばアメリカン・マインドを持つ人々向けの英国風サウンドであります。 tannoy dual concentric軍用や公共施設などのPA関連装置を製造していたタンノイ社がホームユース向けのスピーカを製品化した1948年、すでに英国市場にはオーディオメーカが林立しており国内経済は疲弊の底にありました。 そこで圧倒的な経済力を誇る米国市場に注目し、中産階級に歓迎される英国風サウンドのひな形を徹底研究開発した製品を生み出したのです。 米国内では活発な宣伝活動を展開し、タンノイ社が企画製造したスピーカは米国人にとっての英国風のスタンダードでありステイタスとみなされるようになり、米国市場の旺盛な消費にも後押しされて、毎年のように意匠を変えて英国内よりも多くの輸出用製品が生産されたのです。 タンノイのユニットはホームユースといってもPA的な音の性格があるのも米国人に好意的に受け入れられたのでしょう。 70年代に入り、我国のオーディオ愛好家も米国人にならいました。 周知のとおりタンノイでジャズをリファレンスする人はあまたおり、米国盤をこのスピーカで好んで聴く人は数多く、またMARANTZやMcIntosh製アンプに接続して鳴らす人も数知れず・・・、タンノイのこうした性質を承知した上で使いこなす人ももちろんおられます、が、ほとんどは知らずしてそうなってしまっている。 なるほどタンノイ製スピーカは英国製でありながら歪み感(金属臭い弦の再生音など)は他の英国製スピーカに比べて多く、ジャズやアメリカ製アンプリファイアとしっくり合うのです。 こうしてタンノイ製品は世界中に流通しました。 大量にあったからこそ我国のオーディオ店や専門誌は米国同様タンノイをブリティッシュサウンドとして推薦しました。 これでジャズや米国盤を聴く分には確かに何の問題もありません。 しかしヨーロッパプレスのクラシック盤はどうでしょうか? ヨーロッパの初期盤が我国に出回るようになると、英国真性のホームユース製品、マス・プロダクションでは作り出せないエンジニアリング・スキルに基づいて製作されたオーディオ機器、たとえばプレイヤ(CONNOISSEUR, COLLARO, etc)、アンプリファイア(GOODSELL, PYE,DECCA, SOUNDSALES, LEAK, etc)、スピーカ(米国仕様は除くWharfedale、 米国仕様は除くGoodmans, Barker Duode, Soundsales, etc)の存在がレコード愛好家に認知されるようになります。 LP初期の英国盤やヨーロッパ盤を再生するにあたり 英国真性のプレイヤやアンプリファイアでタンノイを鳴らすと、アメリカを志向した再生音であることが明白になり、結果ヨーロッパ盤再生に違和感を感じ始めた愛好家が増えています。 
冒頭に書いた通り、英国風っぽいTD184でタンノイを鳴らすと、さほど違和感なく愉しめます。 ご参考まで 
以上T氏

参考ページ
TD124の姉妹機たち
TD124の姉妹機たち 2
THORENS TD184の更なる可能性
THORENS TD184の更なる可能性 2

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