SME3009 S2 初期・中期・後期 それにimproved
SME社製トーンアームはヴィンテージオーディオマニアを自称される方であれば一度は使ったことがおありでしょう。 生粋のオーディオマニアでなくても気軽にレコードを楽しみたいだけのユーザーにとっても最良の友です。 創業時から現在まで大量に作られており、入手が容易です。 これまでいろいろのSMEトーンアームをTHORENS TD124に取り付けて試聴してきましたので、今回、特にSMEシリーズ2(S2)について少し書くことにしました。SME社のアームでTD124に最も良い品は、軸受部が丸い初代型のものではなく、軸受部がトンガリ型しているS2モデル(improve型は除く)です。 SME社製アームが大量生産に移る少し前か初めのころに作られたもので、TD124にとって、このアームの再生音を凌駕するものは恐らく全SMEアームの中にはありません。 それ程格別の音がする品です。 世評的には軸受カバーの丸い初期型が良いとされていますが、私の経験から言えば、ステレオ用にしては周波数再生域が狭いため、あまり褒められたものではありません。 これもSPUカートリッヂに的を絞って開発されたのでしょうから仕方ないところでしょう。 トンガリ軸受けのモデルは1962年頃からほぼ10年にわたり作られました。
一口にS2型といっても見かけ上は初期・中期・後期とありますが、素人の方にはウエイトが分離しているかいないかくらいはわかるでしょうが、それ以上の違いを見分けるのは無理でしょう。 再生音にしても、反応しない再生装置では、その違いはほとんど判らないと思います。 量産化のラインで生産された中期・後期モデルは音の出だしから明晰な音を出し、ピンと背筋の通ったクリアーな音を出してくれます。 それに対して初期モデルは、全体がソフトフォーカスぎみで定位自体も少しゆるい、ところが音が音楽の核心に達しようとすると、とたんに全体がシャープになって音像が合い、ソフトフォーカスだったのがきっちりとピントが合ってきます。 この音は実際の演奏会で聴かれる音の感じ方と良く似ています。 ソフトからハードへの移り変わりが音楽をリアルに迫ってくるように聴こえるのです。 このアームの本当の音を知っているのはほんの一部の人だけで、評論家や一般のオーディオマニアの方が言及したことはありません。 初期・中期の違いを意識していないから、形がほとんど同じせいもあり、気にしてもいなかったのでしょう。 そして彼らは完調に整備したTD124やコニサー、コラロ等のフォノモーター・レコードプレイヤで聴くことはありませんでした。 それが決定的でした。 なぜならS2型アームは同時代のアイドラードライブ型、それも高い音楽性を持つものでなければ、その力を充分に発揮することはないからです。 これは公表したとしても、SMEのアームの音は良く吟味した個体でなければ判断が下せないし、手入れされていないS2型ではほとんど判別できません。 お断りしておきたいのは、S2初期型以後のS2中期・後期型アームの音は、決して悪いものではないということです。 量産型の良さもあり再生音にバラつきがなく、何より音がすっきりと際立って提示され、ステレオ再生において無類の効力を発揮してくれる優れものだからです。 トルクが弱い、あるいは反応していないフォノモータと協力してより良い再生を行うことに関しては量産型の方が安定した力を発揮してくれます。 音楽表現力の弱いフォノモータの性能に寄り添う力が量産型の特長であり、常に良質な控え目で音楽にかしずいている、それだからこそユーザーは安心して音楽を楽しめるのです。 対してS2初期モデルは時々フォノモータより自分を主張するきらいがあり、フォノモーターの能力を常に問うものですから、TD124 Mk.1の30000番台モデルでは手に負えないところがあります。 さらにアンプリファイアも選び、良質な英国製できちんとレストアされたものでなければ、良質な再生は望めません。 アメリカ製のアンプ等は相手にしない、と言いたいくらいに気高さがある、使う人のオーディオレベルの高さをも求問されてしまうほどです。 良質なトーンアームが生まれてきた背景には、優れた批評精神から生まれた当時の英国のオーディオ水準の高さがあったことが考えられます。 そうでなければSMEのアームは生まれてこなかったはずです。 これまでSMEを紹介するあたり、S2に的をしぼり初期・中期・後期型に触れた記事があったでしょうか? 加工技術に言及し、歴史的経過が羅列されたことはありました。 しかし、そうした精巧さは機構の創作にあるのではなく、再生における音の精緻さに貢献していることは書かれたことはありませんでした。 スケールモデル製作から始まり、やがて原子力発電所や航空機産業へ精巧な部品を供給していたSME社の社長の趣味が嵩じてこしらえたアームが恐ろしく高度なレベルにまで達してしまったことの真の意味を、何となくではあるが、私には理解できます。 それはSMEがアームを製造を開始した1959年はTD124やコニサークラフツマン社のBタイプモデルが発売されていた時期でもあります。 真空管アンプは納得できる水準に達し、スピーカのラインアップも悪くはない、それでは汎用ステレオトーンアームはどうだったのでしょう? 優れたフォノモーターレコードプレイヤーはすでに出現したいたがゆえの必然だったのではないでしょうか。 つづく
以上T氏
SME3009S2型の初期と中期の違いはただメインウエイトが分離しているだけではない。 デカップリングゴムの構造、アルミ合金チューブ材質等々が異なるし、リード線材と線数、成形精度やサテン塗装研磨の肌理も違う。 再生音が異なるのも当然のこと。
参考ページ
TD124とSME3009 S2の整合
TD124とSME3009 S2の整合 2
TD124とSME3009 S2の整合 3
TD124とSME3009 S2の整合 最終回
一口にS2型といっても見かけ上は初期・中期・後期とありますが、素人の方にはウエイトが分離しているかいないかくらいはわかるでしょうが、それ以上の違いを見分けるのは無理でしょう。 再生音にしても、反応しない再生装置では、その違いはほとんど判らないと思います。 量産化のラインで生産された中期・後期モデルは音の出だしから明晰な音を出し、ピンと背筋の通ったクリアーな音を出してくれます。 それに対して初期モデルは、全体がソフトフォーカスぎみで定位自体も少しゆるい、ところが音が音楽の核心に達しようとすると、とたんに全体がシャープになって音像が合い、ソフトフォーカスだったのがきっちりとピントが合ってきます。 この音は実際の演奏会で聴かれる音の感じ方と良く似ています。 ソフトからハードへの移り変わりが音楽をリアルに迫ってくるように聴こえるのです。 このアームの本当の音を知っているのはほんの一部の人だけで、評論家や一般のオーディオマニアの方が言及したことはありません。 初期・中期の違いを意識していないから、形がほとんど同じせいもあり、気にしてもいなかったのでしょう。 そして彼らは完調に整備したTD124やコニサー、コラロ等のフォノモーター・レコードプレイヤで聴くことはありませんでした。 それが決定的でした。 なぜならS2型アームは同時代のアイドラードライブ型、それも高い音楽性を持つものでなければ、その力を充分に発揮することはないからです。 これは公表したとしても、SMEのアームの音は良く吟味した個体でなければ判断が下せないし、手入れされていないS2型ではほとんど判別できません。 お断りしておきたいのは、S2初期型以後のS2中期・後期型アームの音は、決して悪いものではないということです。 量産型の良さもあり再生音にバラつきがなく、何より音がすっきりと際立って提示され、ステレオ再生において無類の効力を発揮してくれる優れものだからです。 トルクが弱い、あるいは反応していないフォノモータと協力してより良い再生を行うことに関しては量産型の方が安定した力を発揮してくれます。 音楽表現力の弱いフォノモータの性能に寄り添う力が量産型の特長であり、常に良質な控え目で音楽にかしずいている、それだからこそユーザーは安心して音楽を楽しめるのです。 対してS2初期モデルは時々フォノモータより自分を主張するきらいがあり、フォノモーターの能力を常に問うものですから、TD124 Mk.1の30000番台モデルでは手に負えないところがあります。 さらにアンプリファイアも選び、良質な英国製できちんとレストアされたものでなければ、良質な再生は望めません。 アメリカ製のアンプ等は相手にしない、と言いたいくらいに気高さがある、使う人のオーディオレベルの高さをも求問されてしまうほどです。 良質なトーンアームが生まれてきた背景には、優れた批評精神から生まれた当時の英国のオーディオ水準の高さがあったことが考えられます。 そうでなければSMEのアームは生まれてこなかったはずです。 これまでSMEを紹介するあたり、S2に的をしぼり初期・中期・後期型に触れた記事があったでしょうか? 加工技術に言及し、歴史的経過が羅列されたことはありました。 しかし、そうした精巧さは機構の創作にあるのではなく、再生における音の精緻さに貢献していることは書かれたことはありませんでした。 スケールモデル製作から始まり、やがて原子力発電所や航空機産業へ精巧な部品を供給していたSME社の社長の趣味が嵩じてこしらえたアームが恐ろしく高度なレベルにまで達してしまったことの真の意味を、何となくではあるが、私には理解できます。 それはSMEがアームを製造を開始した1959年はTD124やコニサークラフツマン社のBタイプモデルが発売されていた時期でもあります。 真空管アンプは納得できる水準に達し、スピーカのラインアップも悪くはない、それでは汎用ステレオトーンアームはどうだったのでしょう? 優れたフォノモーターレコードプレイヤーはすでに出現したいたがゆえの必然だったのではないでしょうか。 つづく
以上T氏
SME3009S2型の初期と中期の違いはただメインウエイトが分離しているだけではない。 デカップリングゴムの構造、アルミ合金チューブ材質等々が異なるし、リード線材と線数、成形精度やサテン塗装研磨の肌理も違う。 再生音が異なるのも当然のこと。
参考ページ
TD124とSME3009 S2の整合
TD124とSME3009 S2の整合 2
TD124とSME3009 S2の整合 3
TD124とSME3009 S2の整合 最終回