2015年02月01日

SME3009 S2 初期・中期・後期 それにimproved その2

デザインだけとってみれば、SMEトーンアームは英国オーディオ界では特別な存在ではありませんでした。 この時代の英国Hi-Fi Year-bookを見ればわかります。 Expert社製アームやEMI、COSMOCODE等の奇妙なキテレツなアームがゴロゴロしています。 豊富なアイデア、奇抜なデザイン、一点支持ピヴォット、オイルダンプ、質量分離、ジャイロ理論。 これらに比べればSMEのアームデザインは確かにナイフエッジベアリングはユニークですが、あとは普通すぎるくらいです。 評価を高めたのは何よりずば抜けた加工技術精度とトレース能力の確かさだと言われています。 それだけでしょうか。 ちょっと藪にらみで見てみましょう。  同時期に開発されたEMIやDECCA社のアームは同社のカートリッヂのみ取り付け可能な専用アームであり、その音楽性はといえば、SMEの及ぶところではない。 当然です、質量・コンプライアンス等が最適に設計されて、専用カートリッヂから最高の音楽を搾り取れるようになっているからです。 それに対しSMEのようにユニバーサル型トーンアームはあくまで汎用型であってカートリッジと一体となって働くEMIやDECCA,LEAKと較べると音楽の核心に迫る希求力では、どうしても鈍ります。 音楽の趣味性という点では専用ピックアップの方が断然強いのです。 しかしそこにこそSMEの偉大さがあります。 ある一部の趣味人のためではなくもっと広いオーディオ愛好家に音楽を聴く喜びを伝えたい、それもかなり高い水準で。 この一点でSMEは専用アームに肩を並べているのです。 
話しをS2に戻しましょう。 1960年からSME技術陣に加わったW.J.ウォトキンスンがS2ヴァージョン開発のチーフエンジニアを担当します。 彼はステレオカートリッヂのロー・マス化、ハイ・コンプライアンス化に余裕をもって対応できるようオリジナル型にさまざまな工夫を加え、シリーズ2型を完成させます。 初回製造分は1962年6月に販売が開始されます。 その後10年に及んで製造されたS2は初期から中期・後期型へと移行していきます。、この間のS2には特有のいかがわしさがあります。  正直にそのまま音を出そうとするのではなく、音とノイズを区別して取り出すというアコギなことをしてでも楽しく音楽を聴いてもらおうとするいかがわしさ。 私はこういうオーディオ機器が好きです。 1972年、S2はimproved型に取って代わります。 ここがターニングポイントでした。 Improved型になるといかがわしさが消えてしまったのです。 S2improovedはベルトドライヴプレイヤ、そしてシュアV15シリーズにスタンスを移し、自らの性能の向上にしか注意を払わないアスリートになってしまった。 70年代に流行ったスペック主義の前にアコギないかがわしさはもう要らなくなったのです。 そう判断したSME技術者達が悪いのではありません。 レコード自体がダメになってしまったのです。 全体にカッティングレヴェルを下げ、SN比を稼ぐことを優先し、有態にいえば、目を開いたまま眠っている状態でレコードの音楽そのものが劣化していったのです。 これではトーンアームもたまったものではありません。 レコード信号をストレートにスピーカーまで届けるのが最良の方法とみなされ、アームは何もいやらしいことを考えず、ただただせっせとレコードのミゾから振幅を取り出すための支点軸となってしまった。 結果、音とノイズを同じレベルで拾うことになる。 それでは音楽のエロティークは引き出せません。 あの当時、そんなことは問題にはなりませんでした。 レコードはゲインを低くして、ノイズが目立たなくなるよう制作されていました。 能率の低いスピーカーでは粗が聴こえずマイルドに感じられる、それと似たようなものです。 ゲインの高いTD124やコニサー、コラロ等のプレイヤにS2 improovedを取り付けると途端に破綻をきたすことは、これまで何度も経験してきました。 このアームの素性がうかがえます。 ノイズと音楽が同じレベルで出てしまうのです。 これはレストア後のTD124初期型の強くピュアなエネルギ出力を前にしたS2中期と後期型にも時々起ることで、情報量の多さに対処できずに滲みあるいは音楽的ハレーションを起こして、エネルギを音楽にスムーズに変換できないのです。 こうした事実は同じS2でも初期型と中期型を較べてみなければなかなか判らないことであり、実際に比較試聴出来ないほとんどのユーザはS2中期型で満足しているのではないかと思います。 improved以後のSME社製アームはTD124のようなハイゲインプレイヤではなく、もっとローゲインなベルトドライブプレイヤーに組み込みトランジスターアンプのハイパワーでノイズを吹き飛ばす方法で使用するように想定されたのでしょう。 ですからimproved以降のSME社製トーンアームをTD124に取り付け、真空管アンプを使い高能率スピーカーを鳴らしても、何人にも何も与えない、ただ音だけが不気味に空間に定位するような再生音に化けてしまうとだけ言っておきます。 この項おわり 以上T氏

SME3009S2は目に見えるだけでも三度変化する。 パッカードが言った『計画的廃物化』のためのモデルチェンジではなく、あくまでステレオレコード再生様式の変化に忠実に追従していたのだ。 手抜きとかコストを下げるためではなく、レコード盤の変化と一緒に新ヴァージョンを繰り出していく。 レコード音楽の変化が速かった時代を生きたトーンアーム。 S2 improve型以降のSMEはもっともらしい顔つきと、まことしやかな口ぶりばかりの音になってしまった
ご存知の通り、SME3009S2は調整する箇所が多い。 
Crisp and Clear, full of body and ambience, internal pattern of music
comes out. もちろんセッティングがちゃんとしていなければ、初期型だろうと後期型だろうと気持ちよい音は出てこない。

SME公式データ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 製造個体数

Series 1 1959-1963           10,000
Series 2 1962-1973         100,000
Series 2 improoved  1973-       280,000

参考ページ
TD124とSME3009 S2の整合

TD124とSME3009 S2の整合 2

TD124とSME3009 S2の整合 3

TD124とSME3009 S2の整合 最終回


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2015年02月01日