EMI EPU-100 Pick Up system
英国製ピックアップシステム第1回はEMI社 EPU100+EPH/S (トーンアーム+専用カートリッヂ)です。
1958年、ステレオレコード発売に合わせ英EMIが蓄積してきた技術の結晶。 ストイックでありながら端正なデザイン、最高水準の成型精度、カートリッヂとアームの実効質量の絶妙なバランス、入念に仕上げられた完結品。 再生の在り方は、中心に柱を持たない螺旋階段を見る趣きがあり、ゆるやかにあるいは急に回転しながら音は上昇していく感覚です。 生まれた回転力に音の渦は起きる。 虹の竜巻を見るよう。 このピックアップが本当にはたらき出すと、聴き手は眩暈を起こしかねません。 それくらいの音が出てくるのです。
A氏はグレイレコードリスト作成時、ステレオ盤試聴用にこのピックアップを使用していました。 これだと、音楽の旨みがトロトロと湧き出してきて、容易にコメントが書けたのだそうです。 ただし調整は困難を極める。 オイルダンプ式一点支持ピヴォットという構造上、水平バランスやアジマスを司どるバランスウエイト調整はもとより、適正な粘度のダンピング液を調合するだけでも、数多くの試聴の繰り返しが要求されます。 粘度調整はカートリッヂのカンチレバーの振幅感度に反応できるよう、適度なダンピングを与えてやらないと、陰影のある音像の立体感、伸びやかな旋律線とほぐれた響きが得られません。 如実に刻々と音質の違いに反応するオーディオシステムとの組み合わせで、調整ははじめて可能となります。 一連の作業の結果は、検査機器では計れるはずもありません。その都度その都度音出しして聴きながら判断するしかない。 鯛のうまみを味わうのには、鯛という魚を科学的に分析しなければならないと言ったら、皆さんはお笑いになるでしょう。
トーンアームの調整がある程度進みましたら、今度はEPH/Sカートリッヂのカンチレバの調整が待っています。 基本的にバリレラ型であり、磁性体カンチレバーが本体のSN極間の谷間(ギャップ)にどれだけの深さに沈み込ませるのか、で音基本のトルクというか、濃さが決定されます。 そこまで調整できるのがこのカートリッヂの恐ろしさでもあり、ユーザのアドヴェンチュア・スピリットを掻き立てる誘惑でもあります。 それからテンプレイトが示す位置に設置したアームベースを前後にずらしながら再生音を聴き、多彩に表出される音色の数々のなかから、一番しっくりくる音色が出る位置を探し出して固定します。 繊細で感覚的な調整を必要とするこのピックアップ、それだけに首尾よく調整が済めば、魅了されるステレオ再生の開始です。 押しつけのない、風を聴くような浮揚感、レコードの溝から音ではなく、音楽をとりだす技は発見の連続です。 A氏は使いこなせるようになるまで7年はかかり、4個のカートリッヂを潰した、と笑います。
フランスの友人が銚子に遊んだ際、A氏の自宅でEPU100の洗礼を受けます。 以来彼は涙ぐましい努力の果てに本来の再生音をものにします。 優に4年を費やして。 今ではステレオはこれ、モノーラルはPierre Clement/LEAK Dynamic で音楽を湯水のように浴びているとのこと。 実際、彼のリスニングルームはEPU100を使用するようになって、攻撃的ではない家族も一緒に聴ける音楽を再生するようになりました。 家庭にふさわしい液体質の音でレコードが聴ける、フランスのオーディオ愛好家の中でもユニークな装置です。
EPU100+トーレンスTD124エンポリウム仕様のプレイヤを、A氏はグレイリストの試聴に使用した、と書きました。 何故CONNOISSEUR社製Type-B型にしなかったのでしょう。 それをやってしまうと『音楽が出過ぎて、仕事にならなくなってしまうのが怖かった』からだとか。 レコード会社が自社の盤をリファレンスするためのピックアップシステムは、スタジオ用や業務用とは明らかに一線を画するものです。 スタジオ用ピックアップははっきりとは再生しますけれどもそれだけ意味が限られて、輪郭は濃いのですがそれとは裏腹に音の表出は浅いものになります。 優れたホームユース用ピックアップはどれも一音一音に月の暈のような陰があり裏があるように音を出します。 僅かな音が暗示となって聴き手の想像力が働き出し、足りないところを聴き手自らが補うようにする。 ピックアップの出力は、ただその聴き手の想像を誘い出すよう魅了します。 清麗なる液体質のステレオ再生。 念入りに整備された EPU100+CONNOISSEUR Type-B の組み合せは、レコード再生の頂点の一つであります。 グレイではどちらも在庫していますが、これを使いこなせるユーザが現れればいつか組み上げてみようとこころは準備しています。 PYE PF91 X 2 + VITAVOX CN191(1957年製と1954年製)で試聴したうえで書きました。 つづく
以上T氏
参考ページ
英コニサー・クラフツマン3 その4
Dear foreign record and audio lovers,
Our place is located in a small town where is not well known,
however, full of interesting scenery,foods and people.
Near Narita airport
Why not visiting us and listening to music together ?
greythorens@kind.ocn.ne.jp
1958年、ステレオレコード発売に合わせ英EMIが蓄積してきた技術の結晶。 ストイックでありながら端正なデザイン、最高水準の成型精度、カートリッヂとアームの実効質量の絶妙なバランス、入念に仕上げられた完結品。 再生の在り方は、中心に柱を持たない螺旋階段を見る趣きがあり、ゆるやかにあるいは急に回転しながら音は上昇していく感覚です。 生まれた回転力に音の渦は起きる。 虹の竜巻を見るよう。 このピックアップが本当にはたらき出すと、聴き手は眩暈を起こしかねません。 それくらいの音が出てくるのです。
A氏はグレイレコードリスト作成時、ステレオ盤試聴用にこのピックアップを使用していました。 これだと、音楽の旨みがトロトロと湧き出してきて、容易にコメントが書けたのだそうです。 ただし調整は困難を極める。 オイルダンプ式一点支持ピヴォットという構造上、水平バランスやアジマスを司どるバランスウエイト調整はもとより、適正な粘度のダンピング液を調合するだけでも、数多くの試聴の繰り返しが要求されます。 粘度調整はカートリッヂのカンチレバーの振幅感度に反応できるよう、適度なダンピングを与えてやらないと、陰影のある音像の立体感、伸びやかな旋律線とほぐれた響きが得られません。 如実に刻々と音質の違いに反応するオーディオシステムとの組み合わせで、調整ははじめて可能となります。 一連の作業の結果は、検査機器では計れるはずもありません。その都度その都度音出しして聴きながら判断するしかない。 鯛のうまみを味わうのには、鯛という魚を科学的に分析しなければならないと言ったら、皆さんはお笑いになるでしょう。
トーンアームの調整がある程度進みましたら、今度はEPH/Sカートリッヂのカンチレバの調整が待っています。 基本的にバリレラ型であり、磁性体カンチレバーが本体のSN極間の谷間(ギャップ)にどれだけの深さに沈み込ませるのか、で音基本のトルクというか、濃さが決定されます。 そこまで調整できるのがこのカートリッヂの恐ろしさでもあり、ユーザのアドヴェンチュア・スピリットを掻き立てる誘惑でもあります。 それからテンプレイトが示す位置に設置したアームベースを前後にずらしながら再生音を聴き、多彩に表出される音色の数々のなかから、一番しっくりくる音色が出る位置を探し出して固定します。 繊細で感覚的な調整を必要とするこのピックアップ、それだけに首尾よく調整が済めば、魅了されるステレオ再生の開始です。 押しつけのない、風を聴くような浮揚感、レコードの溝から音ではなく、音楽をとりだす技は発見の連続です。 A氏は使いこなせるようになるまで7年はかかり、4個のカートリッヂを潰した、と笑います。
フランスの友人が銚子に遊んだ際、A氏の自宅でEPU100の洗礼を受けます。 以来彼は涙ぐましい努力の果てに本来の再生音をものにします。 優に4年を費やして。 今ではステレオはこれ、モノーラルはPierre Clement/LEAK Dynamic で音楽を湯水のように浴びているとのこと。 実際、彼のリスニングルームはEPU100を使用するようになって、攻撃的ではない家族も一緒に聴ける音楽を再生するようになりました。 家庭にふさわしい液体質の音でレコードが聴ける、フランスのオーディオ愛好家の中でもユニークな装置です。
EPU100+トーレンスTD124エンポリウム仕様のプレイヤを、A氏はグレイリストの試聴に使用した、と書きました。 何故CONNOISSEUR社製Type-B型にしなかったのでしょう。 それをやってしまうと『音楽が出過ぎて、仕事にならなくなってしまうのが怖かった』からだとか。 レコード会社が自社の盤をリファレンスするためのピックアップシステムは、スタジオ用や業務用とは明らかに一線を画するものです。 スタジオ用ピックアップははっきりとは再生しますけれどもそれだけ意味が限られて、輪郭は濃いのですがそれとは裏腹に音の表出は浅いものになります。 優れたホームユース用ピックアップはどれも一音一音に月の暈のような陰があり裏があるように音を出します。 僅かな音が暗示となって聴き手の想像力が働き出し、足りないところを聴き手自らが補うようにする。 ピックアップの出力は、ただその聴き手の想像を誘い出すよう魅了します。 清麗なる液体質のステレオ再生。 念入りに整備された EPU100+CONNOISSEUR Type-B の組み合せは、レコード再生の頂点の一つであります。 グレイではどちらも在庫していますが、これを使いこなせるユーザが現れればいつか組み上げてみようとこころは準備しています。 PYE PF91 X 2 + VITAVOX CN191(1957年製と1954年製)で試聴したうえで書きました。 つづく
以上T氏
参考ページ
英コニサー・クラフツマン3 その4
Dear foreign record and audio lovers,
Our place is located in a small town where is not well known,
however, full of interesting scenery,foods and people.
Near Narita airport
Why not visiting us and listening to music together ?
greythorens@kind.ocn.ne.jp