2015年04月25日

EXPERT HAND-MADE PICK-UP

EXPERT社は蓄音機で知られるE.M.G社長E.M.GINNが1925年に創設したオーディオブランド。 英国ピックアップシリーズ第7回は1952年に発売されたHAND-MADE PICK-UPです。 これまで紹介してきたEMI,LEAK,DECCA社製モノーラルピックアップに比べて、アート感覚に優れたデザインであり、MCカートリッヂを内蔵した質量分離型アームにある支点はすべて硬度強化鋼に超職人技により穿かれた窪みがベアリングの役目を果たすという凝りよう。 十分すぎるほどの出力を持つMCカートリッヂですが、専用トランスも付属してクリスタルカートリッヂ入力しか持たないコントロールアンプリファイアに接続しても十分ドライヴ可能なはずです。

Expert Hand Made Pick-Up


EXPERT社は当時の英国オーディオ界をリードする製品を輩出したのですが、我国ではついぞ輸入された形跡がなく、そのピックアップ、アンプリファイア、スピーカシステムは幻のまま忘れ去られたと言ってよいでしょう。 RIMG0042カートリッヂは今回のようにアームに組み込まれているもの、B&JアームやGARRARD社RCオートマチックプレイヤシリーズに採用されていた3ピンプラグインヘッド型、それにSME4ピンコネクタ仕様のコネクタがヘッドに直接取り付けられた製品の他Worden Articulated arm 、Collaro、LENCO、SME、Ortofonなどの各種シェルに取り付け可能なヘッドも1962年に発売されました。  発電部はLEAK社製カートリッヂと酷似しており、T字型アーマチュアの先端部にダイヤモンド針、横棒部にコイルを巻いたMC型です。 針圧3g、出力60mv(専用トランス併用)

RIMG0734


聴覚的には現代のMCモノーラルカートリッヂと同じく低域から高域に至るまでフラット特性に近いのですが、無機的に音を放り出す現代のカートリッヂに対して、有機的反応力を備えているのがこのピックアップシステムの特長であり決定的な相違となります。 
人工を突き詰めると自然に至るという事例の典型でありますが、その再生音は大げさに言わせてもらえれば地上のそれではなく、成層圏、天空で鳴り響く音なのです。 RIMG0749『永遠の午後』を連想してしまうほどです。 その天空からダイヤモンドの雨のように音楽が地上に降り注ぐのですが、地表に至る刹那また天に昇りはじめ、深い紺色の天界で結晶化した銀河と化す。 そういうイメージが湧いてくるから不思議なピックアップです。 ここに至り聴き手は音楽とは転化された宇宙そのものであると認めざるを得なくなる、という三昧境に惹き込まれていくのです。 いつも定位だの音場だのと言っている人に聴いていただきたいものです。 そういう耳の持ち主には判り得ないかもしれませんが。 もうすこし音そのものに耳を澄ませていただきたい、と感じさせるピックアップです。優美なフォルムを愛でながら、音楽の晴れと雲が流れるさま、レコードのたのしみです。



RIMG0735


CONNOISSEUR CRAFTSMAN-2 + GOODSELL WILIAMSONアンプリファイア(1949) +VITAVOX CN191(1956年製) と組み合わせて試聴しました。 お断りしておきたいのは、このアームとカートリッヂは入念に初期性能に戻さない限り機能しないというのを心置きください。


参考ページ
アートからヘンタイの音
窓を開けてモリー二

Dear foreign record and audio lovers,
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however, full of interesting scenery,foods and people.
Near Narita airport
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2015年04月25日