2015年05月07日

ACOS "HI-LIGHT" STEREOPHONIC PICK-UP

英国ピックアップ第10回、Cosmocord (ACOS) "HI-LIGHT" STEREOPHONIC PICK-UP について書きます。 1960年ロンドン・オーディオフェアで絶賛を浴びたトーンアーム。 企画デザインは、英DECCA社でピックアップ部門を担当していたJean Walton 。 RIMG0004彼女のデザインに見られる曲線が支配的なフォルム、そしてひときわ大きな黒い樹脂製軸受ピヴォットのアイデアは秀逸の一言です。 ほとんどすべてがフラフラで、アームリフタを上げると主軸が上方にスライドして浮き上がりという仕組みからして、英国人でしか為し得ない発想です。 RIMG0008カートリッヂヘッド(ACOS GP77/DECCA DERAM) をアームパイプに直接プラグインするタイプですが、どちらもクリスタル型とセラミック型ですので、コントロールアンプの入力感度の整合が難しい場合は、軽量シェルを取り付けてMMカートリッヂを使用します。 ワンポイント支持ピヴォットでありながら、さらに垂直方向ベアリングを仕込んでさらにフラフラにするという念の入れよう。 フラフラでありながら、再生音は独特の深みを持っているから怖いのです。 ボトムエンドへの切れ込みが尋常ではありません、深くそして急速に沈みつつ楔を打ち込むのです。 したがって低域の伸びは他と一線を画します。 当然これまで何度も言っていたように、米国製アンプやスピーカではこのアームの相手にはなりません。 米国の再生基本は音を伸ばすよりも固めるものであり、質より量で勝負しますから、折角この”HI-LIGHT"アームが超低域に向って猛烈に伸ばしても、すべて空振りするのは火を見るより明らかです。  RIMG0002このアームが創造する音楽は、今日のアナログオーディオ愛好家に実に貴重なメッセージを残していきます。 それは業務用のロングアームこそ雄大な低音を生み出す、こうした何の根拠もない信仰を打ち砕いてくれます。 自然な振幅を前提にした再生に置いて、低域を伸ばし高域を歪少なく再生するためには、アームはフラフラにして適度な制動(ここでは黒い樹脂ピヴォット)、これらが有効な手段である、こうした設計思想は78回転時代において自ら盛大な振動を発するサウンドボックスやカートリッヂから音溝自体の振動を引き出すには、質量ダンプや剛性に頼っていてはクオリティの高い音楽信号は得られないことを、彼らは自ら痛いほど経験しており、フラフラは彼らが生み出した理と知恵の結晶なのです。

hi-light arm


”Hi-Light”アームから再生される異常な音の伸びの在りようは、プロフェショナルの現場で働くフォノモータやアーム・カートリッヂが 圧縮気味に再生し、ホームユースのプレイヤは拡張して再生する事実を知らせてくれます。 ORTOFONのSPUがスタジオでなく、コンシューマユースとして使用されると圧縮された音として聴こえがちであり、それと同時に心なしか音を緊張して聴くことになります。 ホームユースのカートリッヂで聴いた時の解放感とか共感とは反対の心持ちで音楽を聴いているのです。 これはモニタスピーカとホームユーススピーカの違いとも通じるものがあります。 モニタは緊張を、ホームユースは共感をこころの奥にもたらします。 こうした心理は音楽を聴くという行為に非常に影響するのは言うまでもありません。 そのあたりをこれだけアナログオーディオが円熟した時代の今日においても穿き違えている方がまだまだ多いのは否めません。 

RIMG0502


このアームの最大の長所は歪み感の少なさでしょう。 音そのものと言うより音楽的歪み感の少なさと言った方が良いかもしれません。 音が澄み渡って聴こえますし、弦が小川のせせらぎとなり岩背にはじけ木漏れ日がしぶきを宝石のように輝かせる感じです。 今回”HI-LIGHT" アームの能力にはじめてM44-7の反応力が追いつけないのを体験しました。 それほどすごいアームです。

フォノモータはTD124エンポリウム仕様、GOODSELL MA20アンプリファイア、VITAVOX CN191スピーカで試聴しました。 本来であればCONNOISSEUR Craftsman-3 あたりの出番なのでしょうが、キャビネット製作の時間がなく、とりあえずこの組み合わせになりました。 つづく
以上T氏

Dear record and audio lovers,
Our place is located in a small town where is not well known,
however, full of interesting scenery,foods and people.
Near Narita airport
Why not visiting us and listening to music together ?

greythorens@kind.ocn.ne.jp




posted at

2015年05月07日