2015年05月10日

Audio & Design Laboratory Pickup arm M9BA

英国ピックアップシリーズ第11回は、Audio & Design Laboratory Pickup arm です。 英Audio & Design 社(後に Keith Monks社)が1966年に発売した異色作。 

1)幾何学要因による歪みを最小にする 
2)慣性モーメント質量を最小にする 
3)摩擦とスティクションを最小限に抑えかつ滑らかな動作 
4)誰にでも簡単に操作できる 
5)動的つり合いがとれていること
6)内部リード線はネジレや摩擦による抵抗が最少であること 
7) 製品は機械的に安定・強固である 
8)針先の中心がまっすぐにレコードの音溝の底に降りること 

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自らに課した条件をクリアして、考え得る最高水準の音質を生み出すトーンアームが設計されました。 一番の特長はピヴォット内のリード線が捻じれから戻ろうとする力をゼロにするため、ピヴォット受部に4つに分割された水銀貯めナイロン漕を設け、ピヴォット上部の4本の金属ピンとの水銀接触により出力を伝送するアイデアを盛り込みました。 RIMG1187英国一流のひねくれた一点支持ダンプ方式を採用し、時計水準の精度を持つ一点支持ベアリングは4個のミニチュアボールで精密加工されピヴォット頂部に固定されています。 この支持部のおかげで回転摩擦は極端に低く、おそらく数ダインcm/sec と推測され、ヴィスコースダンプによる滑らかさを持たせるという念の入れよう。 慣性モーメントを最小にするよう軽量合金製パイプを採用、当時としては極端に軽量化されています。

再生音は前回のACOS HIGH-LITE アームと同じ傾向ですが、ACOSが適度な湿り気を持ったウオームな感じがするのに対し、これはややドライな傾向にあります。RIMG1191 しかし、中音域の伸び、特にオーケストラのヴィオラとチェロがユニゾンで出たときの音にならない音、虫の羽音のようなある種のノイズを、これほど見事に再生するアームは他にはありません。 音色そのものは多彩ですが、全体のバランスがキレイに整えられているので特有の楽器の音色が立つということが無く、ジャズもポピュラも見事にこなします。 おそらく、想定されたカートリッヂはDECCA Mk. でしょう。 GRAMOPHONE誌のTECHNICAL REPORT(January 1967)でも実際にこのカートリッヂを針圧1.5gで使用し、すべてのテストレコードを問題なくトレースした、と明記されており、グレイでもこの組み合わせで上々の結果が得られました。

Audio & Design社のアームが創出する音が示すところを追っていくと、ある意図に気づきます。 ステレオレコードの出現により、オーディオがポピュラリズムに特化し、その結果生じることになる再生音の平均化(ステレオ効果によりステレオ再生音がどれも同じように聴こえてしまう)にある問題をクリアしようと意図したのがこの製品ではないか。 RIMG1682このアームに関係した技術者たちはどうにかして、再生音の平均化(あるいは平滑化)を是正しようと試みたのだと、再生音を聴いて強く感じます。 それはある程度は成功しています。 ここに聴かれる音は、ステレオ再生の豊かさをちゃんとあらわしてくれているのですから。  しかし、一方では、その豊かさがかえってステレオ録音、再生の音楽的なものへの希求力の弱さを露呈してしまうことにもつながっているともいえましょう。 ある程度の成功とはそういう意味なのです。 1960年代後半という時代はオーディオ界の質的劣化量的増加が顕著でした。 ステレオ装置の一般的普及、レコード販売の増大と質的劣化、トランジスタアンプによる真空管アンプリファイアの駆逐、ブックシェルフ型スピーカの台頭、などなど。 トーンアームの目指すところも、ハイ・コンプライアンス型、軽針圧カートリッヂに如何に対応できるかが問われる時代に入ります。 音の伸びやかさ、音の色調、ハーモニクスの表情といった数値化できないものより、重低音、ダイナミクス、周波数レインジ、ひずみ率ワット数、アームの長さ、スピーカユニットの口径といった計測可能な数値に、ユーザは支配されコントロールされるようになります。 その後70年代の虚構オーディオ全盛を経て衰退期に入り現在に至ります。 事実、オーディオの「ケミカル化」は進みます。 ケミカルなレコードにはケミカルなオーディオで対応するしかありません。 70年代以降のオーディオ装置を見れば、おわかりになる方もおありでしょう。 多くの音楽愛好家が去りオーディオは衰退していきます。 

Audio & Design社は1969年頃にKeith Monks 社となり、M9BAアームはMk.3(1971年) まで製造されます。 
試聴テストに、TD124Mk.2 + GOODSELL MA20アンプリファイア + WARFEDALE SFB3スピーカ を組み合わせました。  なお現在では水銀は健康上不適格ですので、アーム内部リード線をリッツ線に交換し、ループを大きくしてねじれ抵抗を少なくして試聴しました。

Dear record and audio lovers,
Our place is located in a small town where is not well known,
however, full of interesting scenery,foods and people.
Near Narita airport
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2015年05月10日