SME3009S2 Stereophonic tonearm 3
1950年代の英国製ピックアップシステにムはこれまで紹介してきたようにEXPERT,FERRANTI, EMI, DECCA, COSMOCORD, LEAK などがありました。 重要なのはこれらのピックアップシステムをエイクマンは新品を簡単に吟味することが可能だったことです。 オーディオマニアだった彼は、それぞれの技術を読み取り、あるいは聴き取り、何が得点なのか、何が欠点なのかを調べ上げたようです。 特に欠点に重きを置いて調べたと思います。 そこに多くのヒントが潜んでいるからです。 前回書いたPWコネクションとの関係も重要です。 パーシィ・ウィルソンを通じてエイクマンは他社の関係者と緊密な情報交換を保ち、多くのものを得たに違いありません。
加えてエイクマンはこれから来るであろうステレオ時代にそなえて、ステレオ再生の本質に思いを巡らしてもいたでしょう。 そして導き出した結論はステレオ再生とはポピュラリティ(大衆化)への特化である、ではないでしょうか。 つまりステレオ再生装置はこれから通人の独占物から大衆へと主流が移行するのを見越していました。 となれば、彼がこれから世に出そうとするアームの姿が明確に見えてきます。
それは使いやすさでした。 ほとんどのカートリッヂも装着できるようにしていながら、どのカートリッヂの性能も引き出せる機能を持つ。 これこそ当時のオーディオマニアが待ち望んでいたトーンアームでした。 これ一本でいろいろなカートリッヂが試せるというのは、使いやすいということの代名詞でした。 アームを取り替えるたびにプレイヤキャビネットを作り直さずに済むのですから。 PWコネクションの政治力と、それまで星の数ほどあったシェルコネクタの形をSHURE社と手を組んでスタンダード化したのもSMEが果たしたポピュラリティのという点で見逃せない事実です。
第二はトレーシング能力の向上でした。 近い将来、軽針圧ステレオカートリッヂが続々登場しても対応できるように考案されたのが、ナイフエッヂベアリングです。 このユニークなベアリング形状は、後にも先にもSME社製トーンアームの独壇場でした。 ポピュラリティを目指す製品でありながら、最高水準の性能が得られる、これは鬼に金棒です。
第三は上の二点にもかかわることです。 エイクマンはステレオ再生におけるポピュラリティがもたらす弊害にも気づいていました。 ステレオ時代に入ると、再生音がモノーラル時代に比べ平均化しやすい、という現象です。 モノーラル時代、ヘッドと専用アームが対で販売された製品は、それぞれが固有の音楽表現力を持ち、独自の音楽世界観を展開しました。 ステレオレコードの時代が到来すると、固有の音色より音場合成による響きが主体になり、音の実存感や実相というものがうすくなりがちになります。 平均化されてしまうのです。 モノーラル再生よりも格段に音場が拡大はされましたが、音楽が凡庸に響きやすいという弊害、音楽を聴いたという満足感がすっぽかされたと疑問に感じる愛好家が出てきます。 その対応策としてエイクマンには、あるアイデアが浮かびます。 音楽の主成分である主音を硬質に響かせる工夫と、残響音をやわらかく且つ分解させる力をSMEトーンアームに具えさせるのです。 こうしてステレオ再生における再生の平均化という問題に取り組んで改善することに成功します。 S2が販売された10年の間、その時代時代のステレオレコードに適応するよう研究し尽したに違いありません。 その証拠に、最後期モデルは主音の硬質さが初期型の太めの響きからやや細くなっていくのが聴き取れます。 後期型の時代、広帯域レコードを小型スピーカで楽しむのが流れになったからでしょう。 大型スピーカを2台ドンと設置する時代ではなくなったのです。 おわり
以上T氏
参考ページ
SME3009 S2 初期・中期・後期 それにimproved
SME3009 S2 初期・中期・後期 それにimproved その2

それは使いやすさでした。 ほとんどのカートリッヂも装着できるようにしていながら、どのカートリッヂの性能も引き出せる機能を持つ。 これこそ当時のオーディオマニアが待ち望んでいたトーンアームでした。 これ一本でいろいろなカートリッヂが試せるというのは、使いやすいということの代名詞でした。 アームを取り替えるたびにプレイヤキャビネットを作り直さずに済むのですから。 PWコネクションの政治力と、それまで星の数ほどあったシェルコネクタの形をSHURE社と手を組んでスタンダード化したのもSMEが果たしたポピュラリティのという点で見逃せない事実です。
第二はトレーシング能力の向上でした。 近い将来、軽針圧ステレオカートリッヂが続々登場しても対応できるように考案されたのが、ナイフエッヂベアリングです。 このユニークなベアリング形状は、後にも先にもSME社製トーンアームの独壇場でした。 ポピュラリティを目指す製品でありながら、最高水準の性能が得られる、これは鬼に金棒です。
第三は上の二点にもかかわることです。 エイクマンはステレオ再生におけるポピュラリティがもたらす弊害にも気づいていました。 ステレオ時代に入ると、再生音がモノーラル時代に比べ平均化しやすい、という現象です。 モノーラル時代、ヘッドと専用アームが対で販売された製品は、それぞれが固有の音楽表現力を持ち、独自の音楽世界観を展開しました。 ステレオレコードの時代が到来すると、固有の音色より音場合成による響きが主体になり、音の実存感や実相というものがうすくなりがちになります。 平均化されてしまうのです。 モノーラル再生よりも格段に音場が拡大はされましたが、音楽が凡庸に響きやすいという弊害、音楽を聴いたという満足感がすっぽかされたと疑問に感じる愛好家が出てきます。 その対応策としてエイクマンには、あるアイデアが浮かびます。 音楽の主成分である主音を硬質に響かせる工夫と、残響音をやわらかく且つ分解させる力をSMEトーンアームに具えさせるのです。 こうしてステレオ再生における再生の平均化という問題に取り組んで改善することに成功します。 S2が販売された10年の間、その時代時代のステレオレコードに適応するよう研究し尽したに違いありません。 その証拠に、最後期モデルは主音の硬質さが初期型の太めの響きからやや細くなっていくのが聴き取れます。 後期型の時代、広帯域レコードを小型スピーカで楽しむのが流れになったからでしょう。 大型スピーカを2台ドンと設置する時代ではなくなったのです。 おわり
以上T氏
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SME3009 S2 初期・中期・後期 それにimproved
SME3009 S2 初期・中期・後期 それにimproved その2