2015年08月05日

新しいコンセプトでエンクロージャを製作する 9

6) 大口径スピーカシステムの難しさ その2

マルチシステムで音楽再生のかなめとなるのが、適切な統率力を持つレコードプレイヤです。 マルチシステムという方式では常にユニット同志が別々に働こうとする傾向にあるからです。 ユーザは何とかまとめようとはするのですが、生憎と人間である以上電気信号の内側に入ることはできません。 その代わりをしてくれるのがレコードプレイヤなのです。 
大掛かりなマルチシステムを組む人が同じように大がかりなプレイヤを据えようとするのはそのためであり、畢竟アナログプレイヤの機械力による統率力に注意を向けた人は多くはありませんでした。 プレイヤの仕掛けとはたらきは全く別のものであるということさえ知らなかったユーザがどれほど多いことか。 プラッタが大きければ安定した音が出て、重ければ重低音が出ると宣伝文句のままに思い込んでしまったのです。 そういうことではないのです。
こうしたシステムで大きな統率力を発揮するのがトーレンスTD124であるのは間違いありません。 このプレイヤが誕生したのがパトリシアンやハートレィ等大口径ウーファが存在した時代であり、その力を持ってすれば15inchダブルウーファくらいは楽々と鳴らしめるはずです。 電気の魔力を利した全盛の時代にこのプレイヤは開発されたのですから。 
お断りしておきたいのは、15inchウーファマルチアンプシステムはオーディオ再生の究極の目標ではないということです。 これは一つの方法ではありますが、誰もが目指すべきではありません。 この方式を採る方々はそもそも意識そのものが普通ではないのです。 彼らが本当に聴きたい音とは、自意識が潜在意識の鏡に映る影なのです。 その影をはっきり認識しようと、マルチアンプ・マルチスピーカを採用しているのです。 実体としては心象風景カメラマンと言うべきものでしょう。 ゆえに出てくる再生音はきわめて私的なものであり、電気の魔力のひとつである人間の共感覚(公立性)は乏しい傾向にあります。 マルチシステムの調整とは自意識を映す潜在意識と云う鏡の角度調整であり、それが完全に正対し正しい影が発生することを第一義のものとしているのです。 
こうした修行(本人にとっては悦楽)を一般のユーザは望まないはずです。 もっと緊張せずに音楽を愉しみたいというのが本当のところでしょう。 狭い部屋に15inchウーファを何発も持ち込むのは音楽を愉しむうえで一番の障害となる緊張も同時に持ち込んでしまう。 音楽の最高の聴き方は少々の緊張感と大いなる脱力のように思います。 にもかかわらず、マルチシステムで音楽を愉しんでいる人もほんの少しですがいるにはいるでしょう。 まさしく神業です。 その他のほとんどの方は無理は通せても道理は引っ込まないというのが現実でしょう。   つづく
以上T氏

このあと英DUODEスピーカエンクロージャ製作記に続く予定ですが、T氏はこれより夏休みに入りますのでしばらく時間がかかります。 


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