2015年10月26日

どーでもいい

どーでもいい
あってもなくても良い

現世ではほとんどがこういうことになっている。

僕が今している商売もそれだ。
今している仕事というより商売といった方が似合っている。
この世の中には、あってもなくても良い商売だろう。

たとえば『空気をまとう音』なんてどーでも良いことだ、世界の大部分の人にとっては。
その中でほんの一滴の人が読んでくれているのだが、
その読んでくれた方々さえ忘れ去るに決まっている。

レコードにしてもそうだ。
この世から一枚残らずLPが消えたとしても、ほとんどの人は、ああそーなの、で終わりだろう。

モーツァルト 弦楽五重奏曲K.516 ベートーヴェン四重奏団
メロディヤ紺レーベル(63年日付)  ドミトリ・ツィガノフはじめ1923年創設以来のメンバーによるK.516。 エグミのあるえんどう豆の味わい。 エモーショナルでクセになりそう。 旋律はたっぷりこぶしを利かせ、フレーズが反り返る。 それにンチャッチャッチャッと勢い付けて他の四人が合いの手を入れる。 ほとんど民謡のジャムセッション。 うねるはうねるは。 ホッケの開きの味が、レフ・トルストイの短編の匂いがする。 ソビエトプレスですが、錆臭い音はせずはっきり言って美音、ノイズもなく聴きやすい状態の盤です。  NABカーヴで聴きました。 ジャケット取り出し口にテープ剥がし跡 10インチ ソビエトプレス

どーでもよいことかもしれないが、この1枚をオークションに出してみることにする。
誰かがこれを聴いて、何かを感じるかもしれない。

一体にソビエト時代の演奏家は、芸術を目指していて、芸を磨こうとしていたわけではない。 RIMG0001タテマエではそうなるらしい。 でもロシア民謡のノリでモーツァルトを奏するのは、粛清の対象にはならなかったようだ。 事実ソビエト政府はロシア民謡を奨励していた。 民謡にこっそり芸を忍ばせるのがこのレコードには記録されている。 ツィガノフたちの小粋な反乱だ。 これがあるから、ベートーヴェン四重奏団はいまでもどーでも良い人々に珍重されるのだろう。  

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