英 iFi社 retro50 番外編 エレクトリック・ディストーション 3
ヨーロッパの音
ヨーロッパのヴィンテージ機器は原則きちんと整えられた入力信号を得て初めて良好にはたらくように製造されています。 たとえばアンプリファイア出力とスピーカユニットのハンドリング・キャパシティの関係などは端的にそれを物語っています。 1950年代後半、3Wから15Wが当時の常識的がアンプの出力であり、ホームユースのスピーカユニットのキャパシティも6Wから15W程度の範囲にありました。 小さな出力で質の高い音質を供給するアンプがズラリと揃っていました。 英国だけをとってもArmstrong, BTH, Beam-Eco,Chapman, Clarke&Smith, Cooper-Smith, Decca, Dynatron, EMG, Expert, Goodsell, Leak, Dulci, Lowther, Pamphonic, Pye, Radford, British-RCA, Rogers, Saville, Shirley, Sound Sales, Sugden, Tannoy, といったアンプ製造会社がひしめきあっていました。 米国製マッキントッシュやマランツに比べると、音質の傾向の違いは明白です。 ヨーロッパ製アンプを製作したメーカは、スピーカが空気を自然に震わせるスタイルを熟知していました。 アメリカ製のようにスピーカをアンプの力でねじ伏せるのとは正反対な駆動の在り方を志向しました。 これによりナチュラル・ディストーションがエレクトリック・ディストーションに変質することを避けることができたのです。
ヨーロッパで製作されたアンプが、世界のレコード市場をリードしたアメリカン・ポップスのレコードをどういう風にスピーカから再生したのでしょうか。 これは国によって異なる様相を呈します。 オランダの場合比較的ダイレクトに再生します、でも音色はヨーロッパのものです。 ドイツはここはこう出すべき、という頑固さがあると同時にアメリカのポップスには引っかからない類のまじめさが付きまといます。 フランスは気に入らない音は無視して好きな音だけを出します、もちろん音はフランス風に仕立て直されていますが。 英国となると、少々入り組んでいます。 言語的にアメリカン・ポップスとは共通しているので親近感を持って再生します。 ただ表現は控えめでアメリカ製機器のように積極的に音楽を聞かせようとはしません。 ここにはやはりハイ・フィデリティの精神が宿っているからでしょう。 全体としては清んだ音を出し、よく言えば品、悪く言えばお高い音です。 このお高い音はナチュラル・ディストーションへの反応力のあらわれでもあります。 ポップスにナチュラル・ディストーションを含んだ響きやフレーズがあると途端に反応してしまいます。 曲中にクラシックの要素を含んでいると、それに反応するのです。 バッハをジャズにアレンジした曲をかけると、ジャズよりクラシック寄りに聞こえるのはしばしばです。 こうした英国製アンプリファイアの鳴り方では、アメリカジャズにどっぷり浸りたい人には物足りなさを感じることでしょう。 汗臭さとか泥臭さはエレクトリック・ディストーションに対するそれぞれの国や製作者の思想から生じた反応力によることを思い知らされます。 ヨーロッパ製オーディオ機器を聴きなれてしまった耳には、アメリカ製機器が再生する迫真のシンバルやウッドベースが巧妙にこしらえた作り物に聞こえてなりません。 それに気づいた今となっては、音楽に入り込めなくなってしまう余計な音が多く、真に心にしみこんでくる空気感が稀薄であるように感じるからです。 しかし、それはそれでいいのでしょう。 なんてったって、アメリカ製機器はノリがいいのですから。 つづく
以上T氏
ヨーロッパのヴィンテージ機器は原則きちんと整えられた入力信号を得て初めて良好にはたらくように製造されています。 たとえばアンプリファイア出力とスピーカユニットのハンドリング・キャパシティの関係などは端的にそれを物語っています。 1950年代後半、3Wから15Wが当時の常識的がアンプの出力であり、ホームユースのスピーカユニットのキャパシティも6Wから15W程度の範囲にありました。 小さな出力で質の高い音質を供給するアンプがズラリと揃っていました。 英国だけをとってもArmstrong, BTH, Beam-Eco,Chapman, Clarke&Smith, Cooper-Smith, Decca, Dynatron, EMG, Expert, Goodsell, Leak, Dulci, Lowther, Pamphonic, Pye, Radford, British-RCA, Rogers, Saville, Shirley, Sound Sales, Sugden, Tannoy, といったアンプ製造会社がひしめきあっていました。 米国製マッキントッシュやマランツに比べると、音質の傾向の違いは明白です。 ヨーロッパ製アンプを製作したメーカは、スピーカが空気を自然に震わせるスタイルを熟知していました。 アメリカ製のようにスピーカをアンプの力でねじ伏せるのとは正反対な駆動の在り方を志向しました。 これによりナチュラル・ディストーションがエレクトリック・ディストーションに変質することを避けることができたのです。
ヨーロッパで製作されたアンプが、世界のレコード市場をリードしたアメリカン・ポップスのレコードをどういう風にスピーカから再生したのでしょうか。 これは国によって異なる様相を呈します。 オランダの場合比較的ダイレクトに再生します、でも音色はヨーロッパのものです。 ドイツはここはこう出すべき、という頑固さがあると同時にアメリカのポップスには引っかからない類のまじめさが付きまといます。 フランスは気に入らない音は無視して好きな音だけを出します、もちろん音はフランス風に仕立て直されていますが。 英国となると、少々入り組んでいます。 言語的にアメリカン・ポップスとは共通しているので親近感を持って再生します。 ただ表現は控えめでアメリカ製機器のように積極的に音楽を聞かせようとはしません。 ここにはやはりハイ・フィデリティの精神が宿っているからでしょう。 全体としては清んだ音を出し、よく言えば品、悪く言えばお高い音です。 このお高い音はナチュラル・ディストーションへの反応力のあらわれでもあります。 ポップスにナチュラル・ディストーションを含んだ響きやフレーズがあると途端に反応してしまいます。 曲中にクラシックの要素を含んでいると、それに反応するのです。 バッハをジャズにアレンジした曲をかけると、ジャズよりクラシック寄りに聞こえるのはしばしばです。 こうした英国製アンプリファイアの鳴り方では、アメリカジャズにどっぷり浸りたい人には物足りなさを感じることでしょう。 汗臭さとか泥臭さはエレクトリック・ディストーションに対するそれぞれの国や製作者の思想から生じた反応力によることを思い知らされます。 ヨーロッパ製オーディオ機器を聴きなれてしまった耳には、アメリカ製機器が再生する迫真のシンバルやウッドベースが巧妙にこしらえた作り物に聞こえてなりません。 それに気づいた今となっては、音楽に入り込めなくなってしまう余計な音が多く、真に心にしみこんでくる空気感が稀薄であるように感じるからです。 しかし、それはそれでいいのでしょう。 なんてったって、アメリカ製機器はノリがいいのですから。 つづく
以上T氏