面白い音
アイロンをかけた新聞を朝食のテーブルに置く英国海峡沿いのホテルの窓、ふらり入った近所の食堂のチャーハンの味に「エエッ」と驚く、ちょっとしたことで憶えていること。
心に手を当てて振り返る、どんな音を憶えているか。素敵な音のヴァイオリンに、良い音とは感じても、それで終わり。「あっけらかん」としているから、寝る前には忘れてしまっている。だけどヴァイオリンにアッと言わせる輝きがあったり、恨みを練り込んだ音色が耳に忍び寄ってきたとき、凄みが利いていたり、こころが弛緩する音に包まれたとき・・・音楽は現れる。装置のどこかが狂っていたり、寿命が尽きる寸前に出くわしたりする。本を読んでいたり、うたた寝していているとき、車窓から景色を眺めていたりするとき、僕の場合、そういう音に遭遇することが圧倒的に多い。今でも憶えている面白い音。予期しない音が予期しないときに現れる。なんで?
パラディスのシシリエンヌが流れてくる、ヴァイオリンを奏しながらミルシテインは見事な鼻息を披露する。わざとらしくなく、鼻息がさらりと曲に合いの手を入れる塩梅で部屋の空気が震えると、これは、クラクラする。鼻息がシシリエンヌを「芸術」ではなく「芸」にしている。その鼻息を敢えて溝に刻んだキャピタル・レコーズのリチャード・ジョーンズとフランク・アビーの「録音芸」に唸る。
普段それほどでもないのに、あっと面白い音を出す装置。
やんちゃな装置を僕は好きです。
I'm funny that way.
心に手を当てて振り返る、どんな音を憶えているか。素敵な音のヴァイオリンに、良い音とは感じても、それで終わり。「あっけらかん」としているから、寝る前には忘れてしまっている。だけどヴァイオリンにアッと言わせる輝きがあったり、恨みを練り込んだ音色が耳に忍び寄ってきたとき、凄みが利いていたり、こころが弛緩する音に包まれたとき・・・音楽は現れる。装置のどこかが狂っていたり、寿命が尽きる寸前に出くわしたりする。本を読んでいたり、うたた寝していているとき、車窓から景色を眺めていたりするとき、僕の場合、そういう音に遭遇することが圧倒的に多い。今でも憶えている面白い音。予期しない音が予期しないときに現れる。なんで?
パラディスのシシリエンヌが流れてくる、ヴァイオリンを奏しながらミルシテインは見事な鼻息を披露する。わざとらしくなく、鼻息がさらりと曲に合いの手を入れる塩梅で部屋の空気が震えると、これは、クラクラする。鼻息がシシリエンヌを「芸術」ではなく「芸」にしている。その鼻息を敢えて溝に刻んだキャピタル・レコーズのリチャード・ジョーンズとフランク・アビーの「録音芸」に唸る。
普段それほどでもないのに、あっと面白い音を出す装置。
やんちゃな装置を僕は好きです。
I'm funny that way.