混変調歪 その2
じつは、混変調歪って、プレイヤにもあります。例えばオーケストラのレコード。第1ヴァイオリンが塊になっているとしたら、それは混変調歪のせいです。プレイヤを調整して混変調歪を減らすと、どうでしょう?第1ヴァイオリンがほぐれて再生され、上ずらないで音場に広がりはじめます。みずみずしく。そうしてオーケストラの楽器が響きあって空気が震えるようになれば、しめたもの。低音が雄弁に、高音域もサクッと伸びていく。そうして活き活きと音楽が産まれます。確かに調整は簡単ではありません。プレイヤをただクリーニングして表面的な性能復帰だけでは満足できる混変調歪の水準にまで置くことは無理。試聴しては必要な箇所に作業を加える、これを繰り返してはじめて混変調歪が解消されていく。たとえば試聴しながら気になる箇所の軸受を特殊な研磨剤で磨き仕上げる、アイドラホイールを最適な接地面の形状に加工する、センタスピンドル、ゴムシート、その他気になる部品にこなしを施す、聴きながら。基本的なレストア作業が完了したあと、試聴しながらの調整は音質の仕上りに大きな違いをもたらします。これ、計測器を持っていなくても、レコードを聴く耳をもっていれば判ります。
すべての音を細部に渉り忠実に再現する、できる限りの低音できるだけの高音を出す。それがハイフィデリティだと言われてきました。でも「ちょっと違うんじゃない」とつぶやく愛好家が増えているのも確か。無理やり低音、絞り出す高音をあえて捨て、装置が無理をしないなかで音楽をこしらえていく。共感できる音を探っていく。広域周波数帯域優先、ディテール再生を捨てると音が伸びるようになり、音色が生まれ、ゆたかなハーモニクスに旨味を引く。音の体幹がしっかりして、深みが出るようになる。こうして耳が濡れていく。ハイフィデリティはワイドレインジという切り口ではなく、音の旨味あるいはテクスチュアを意識する再生法は我が国独特の感覚に通じています。日本人にふさわしい音の楽しみ方。音の旨味は音量を下げるとより容易に得ることができる、と感じている方もいらっしゃるはず。音量をちょっと抑えることにより、また違う音楽が聴こえてきます。耳を遊ばせ、耳を澄ます。耳の感覚はこうして磨かれていきます。気持ち良い音の肌合いを求めて、時の変化を感じて。 この項終わり
すべての音を細部に渉り忠実に再現する、できる限りの低音できるだけの高音を出す。それがハイフィデリティだと言われてきました。でも「ちょっと違うんじゃない」とつぶやく愛好家が増えているのも確か。無理やり低音、絞り出す高音をあえて捨て、装置が無理をしないなかで音楽をこしらえていく。共感できる音を探っていく。広域周波数帯域優先、ディテール再生を捨てると音が伸びるようになり、音色が生まれ、ゆたかなハーモニクスに旨味を引く。音の体幹がしっかりして、深みが出るようになる。こうして耳が濡れていく。ハイフィデリティはワイドレインジという切り口ではなく、音の旨味あるいはテクスチュアを意識する再生法は我が国独特の感覚に通じています。日本人にふさわしい音の楽しみ方。音の旨味は音量を下げるとより容易に得ることができる、と感じている方もいらっしゃるはず。音量をちょっと抑えることにより、また違う音楽が聴こえてきます。耳を遊ばせ、耳を澄ます。耳の感覚はこうして磨かれていきます。気持ち良い音の肌合いを求めて、時の変化を感じて。 この項終わり