馴染む
レストア作業で重いのは、部品がどういう表情で何をして欲しいかを感じとり、それがどういう音に貢献しているかをイメージすること。もう一つは個体を傷めずに元に戻すこころがけ。それには最適な道具をどれだけ持つかも大切になります。例えばネジ、溝にしっくり入れて回す力が確実にネジに伝わるドライバがあれば、大抵のネジは気持ちよく外れてくれます。一本一本のネジには表情があり、それに合うドライバを選ぶ。幸いなことにグレイには前任のT氏が作成してくれた先端を加工したドライバがたくさん残されており、やっかいなネジでもキレイに外すことができます。そう、ネジ一つ外すにもイマジネイションが要ります。逆に締める時にもイマジネイションが要ります。どのくらいの強さで締めるとどんな響きになるのか。一本のネジでもそれぞれ締めるトルクは違います。音楽に強弱があるように、締め具合にもフォルテとピアノがあり、締める強弱は無段階で無数にある。そうして初めてレストアするひとの音楽がレコード再生音に伝わります。
Thorens TD124 にある何十本というネジがきれいに締めこまれていると、やがて部品のそれぞれがしっくり馴染んで再生音にある音楽成分を際立たせ始めるのです。TD124が振動系コントロールアンプとなって、レコードに刻まれた溝を解読変換していきます。
ヴィンテージと呼ばれるオーディオ機器は、きちんとレストアされてユーザーの元に届けられてからが大切です。システム全体に馴染むように永く大切に接しないと、システムはいつまで経っても機嫌良い音を出してくれません。ひとときでも「ハッ」とする音楽が聞こえてきたら。それ、良いきっかけなのです。そういうきっかけを与えてくれる機器が聞き手の耳を磨きます。
ヴィンテージの機器をとっかえひっかえしていると、きっかけも逃げていきます。ヴィンテージの機器を選ぶとき、飼い犬を択ぶのと同じく直感がはたらくものです。それを短い期間で取り替えてしまうのは、直感を信じないのと同時に、馴染むことの旨味をスポイルすることにもなるでしょう。
Thorens TD124 にある何十本というネジがきれいに締めこまれていると、やがて部品のそれぞれがしっくり馴染んで再生音にある音楽成分を際立たせ始めるのです。TD124が振動系コントロールアンプとなって、レコードに刻まれた溝を解読変換していきます。
ヴィンテージと呼ばれるオーディオ機器は、きちんとレストアされてユーザーの元に届けられてからが大切です。システム全体に馴染むように永く大切に接しないと、システムはいつまで経っても機嫌良い音を出してくれません。ひとときでも「ハッ」とする音楽が聞こえてきたら。それ、良いきっかけなのです。そういうきっかけを与えてくれる機器が聞き手の耳を磨きます。
ヴィンテージの機器をとっかえひっかえしていると、きっかけも逃げていきます。ヴィンテージの機器を選ぶとき、飼い犬を択ぶのと同じく直感がはたらくものです。それを短い期間で取り替えてしまうのは、直感を信じないのと同時に、馴染むことの旨味をスポイルすることにもなるでしょう。