2020年12月31日

オーディオの音 音楽の音

おおつもごり。TD124のレストアを引き継いで一年が経ちました。数十台のTD124をレストアしてきました。レコードをかけてみる。音楽が出ているか、音楽に入り込めるか、それをものさしに試聴します。音楽が耳の穴にぶつからないでしっくり入ってくるか、肌も震わせるか ? だから使う人にいつも聞くレコードや音楽のジャンルをお伺いしている。
音の「肌合い」です。今気になっているのは。
パッと聴いて、「あ、ラフマニノフ」とか「このオーボエの音色」とか「ファンキーなハジキ」といったこと。音場がああ静か、ぱっと聞いて「ああ、いい」「はいってくるう」なんて、そんな感じ方ができるプレイヤに仕上げるのが、おつとめです。ちゃんと動作するように本来の姿に戻してやらなければなりません。同じTD124でもそれぞれの個体で出したい音楽は明らかにちがう。汚れを取って磨き、動作するところはそれぞれにカチリ、ヌメリ、カン、リン、ソロリ、スッ、っていう感じになるように仕上げいくと、それぞれ違う音楽を奏でてくれます。ただ、軽く回り、いたずらに開閉すればいい、ではないのです。なんてったってこれは音楽を人間の気持ちを再生するのですから。調整の加減は無段階、それを決めるのが一番の仕事。出てくるのが音でなく音楽にならなければPlayerではない。ただクリーニングすれば、モータを分解すれば良い、そんな一筋縄ではいかぬのがTD124だと、はっきり、この一年で思い知らされる。
このごろオフィスで使っているスピーカについてもひとこと。
めぼしいスピーカが売れてしまったのでしまいこんであった小さなブックシェルフを11月に出してつないでみました。聴いたとたん、これは、と感じた。可愛い音がする、嫌な音がしないスピーカでちょっと気に入った。なかなかいける、作業の間中聞いてそう思いました。別のことをしながら音楽を感じたらそれは良い装置。欲のない耳で聞いているから。薄いキャビネットの裏蓋を開いてみると、ROLA-CELESTIONの10インチ、英製 ISOPHON のトゥイータがコイルとコンデンサでネットワークされています。蓋にはロンドンのラヂオ店の赤いシール。60年代前半にラヂオ屋のおやじが何台か作ったのでしょう。どっこい、これが100平米ほどのオフィスの空気をビンビン音楽で震わせている。こんなおやじに僕もなりたい。耳だけでなく、からだが歓ぶのです。
おおつごもり。寒いです。

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2020年12月