2021年01月19日

80年代のレコード

ラフマニノフピアノ協奏曲2番、昨年来、この通俗名曲を引き摺っている。今日はセシル・ウーセが弾いた80年代の盤を聴く。薄い盤、手に挟むと静電気がパチパチと埃を吸い付ける。そしてレコードをかけて改めて驚いた。小さなスピーカで聞くと大きなスピーカより音楽が出てくるカッティング。ジョン・フレイザとマイケル・シーディはいい仕事をやってのけた。
IMG_0270どちらかというと不遇なフランスのピアニストだった。50年代にラドミローのソナタでモリス・マレシャルに伴奏を付けてLPデビュー(DMO‐505)、その後東独エテルナに録音を少し、70年代にはソシエテ・フランセーズ・デュ・ソンに結構な数の録音があるはずがほとんど無視されていた。その彼女、80年代に花開いた。この確信、この思い切りの良さ、怖いものなしの音からほとばしる硬質ロマンティズム。そう、欲がないのが肝心。だから自ずと楽想は伸びてゆく。のめりこんで弾いているのに語り口は整って。聞き手はグイグイ惹き込まれていく。ラフマニノフの衣を借りたピアニストは存分に魔を噴きこぼす。ふやけたりにやけたり、期待できない盤ばかりの80年代のなかでひときわきらめくレコード。青年ラトルが元気にドライヴするオーケストラはソリストを煽る煽る。がっしり安定する音質も悪くない。60年代後半の英EMIsemi-circle に似て、周波数レインジが広いのに中抜けがなく響きが濃い。
興味のある方、彼女のプロコフィエフも是非見聞きしてほしい。音質はレコードに遠く及ばないが、動きから何かが伝わるかも。



プロコフィエフで痛い音を出さないピアニスト、他に誰かいる?
ラヂオ(映画「逢引き」)

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2021年01月