2007年03月13日

トーレンス オイルレスメタルの迷信

軸受け今日の午後は、オーディオの細道を散歩してみることにします。 モーターの心棒を上下で支える真鍮製軸受け(通称ピーナッツ)について書いてみます。 『前回トーレンスTD124装備のモーターの調整についてお話ししましたが、それは四本のネジを締めながら、上下のピーナッツと心棒のアタリをとっていたのです。 このアタリ具合で、モーター性能(トルク/ノイズ/安定性)が決定付けられるのです。 ピーナッツはオイルレスメタルであり、この効能については諸説さまざまなものがあります。 オイルレスですから注油なしで回るがごとき印象を持ちますが、そのようなことはありえるでしょうか。 私はオイルレスメタルの効用は補助的なものであると考えます。 つまり、軸受け表面に傷が付くのを防ぐ、軸受けのエージングが完了し安定した回転を得るまで潤滑をコンスタントに供給する、モーターの水平が保たれていない時に心棒の摩滅を防ぐなどの役割を負っているに過ぎません。 これまで、数十台のモーターをレストアしてきましたが、そのどれもが錆びていることこそあれ、ピーナッツ軸受け穴内部の表面が擦れて光っているのを見たことがありません。 ということはエージングの済んだモーターのオイルレス軸受けと心棒との間に薄いオイルの膜が出来るため、直接接触することはないのです。 この事実とオイルレスメタルという材質による補助を受け、TD124のモーターは安定した性能を長期にわたり保持することが可能になったのです。 繰り返しますが、オイルの適切な注油が第一であり、オイルレスメタルの効用は二次的なものです。 ですから、オイルレスメタルだけで安定した静粛な回転を得るのは不可能なのです。 さらに突っ込んで言えば、ピーナッツ部品の封入オイル含有量について云々するより、軸受け穴内部を滑らかにする方が、数段重要なのです。 これも経験から言うのですが、現存するTD124は適切な部品交換なしに連続使用されるという劣悪な条件下にあるのがほとんどです。 ピーナッツ内周部の錆びを研磨修正しようとすると、必要以上に穴の径が広がり、シャフトとのすり合わせに不都合を生じてしまいます。 私たちはすべてのTD124モーターのピーナッツをスイスSchopper社製の新品オイルレスピーナッツと交換しています。 代替部品がないならまだしも、良質の新品部品があるなら、それを使用してレストアした方が、ベストの状態に近づくのは自明の理であります。 わざわざ、危うきに近づくことはないのです。』 以上フルレストア・スペシアリストであるT氏が作業しながら語ってくれたことをまとめてみました。 
交換新品部品


オイルレスメタル軸受け(ピーナッツ)の経年部品と新品部品


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