2007年04月16日

縦のものを横にする

LPレコードプレーヤー。 新入学の大学生がやってきて、レコードに針をおろして回るトーレンス・プレーヤーを飽かず眺めて言った。 「話には聞いていたけれど、こんなの見るの初めてです。こうして音が出るんだ。」と好奇心に目を輝かせていた。 今日、ご紹介するプレーヤーは「こんなん見たことない」のひとつ。 トーレンスと同じスイス製ながら、発想は正反対。 ユニークな構造なので、一度音を出してみようということになった。 普通は縦置きのモーターが、横置きに据えられている。 横置きモーターがっちり静かなモーターで熱も持たない。 テーパードプーリーと称する、中世騎士の槍みたいな円錐形のプーリーを装着、おかげで30〜80回転まで無段変速という凄いレコードプレーヤーだ。 縦アイドラーホイール50Hz用のこのモデルを西日本の60Hz地帯に持っていけば、90回転以上まで回転を上げられるから、SP盤とくにPathé社盤の愛好家(いないか)には夢のような機能だ。 モーターが横なら、アイドラーは縦に回る。 それがプラッターの水平面に接して回転推力を与えるユニークな駆動形式だ。 LENCO G-99十数年前に英国から到着したままほったらかしだったが、1966年製プラスティックを多用したデザインに、たまたまにくさを感じて、聴いてみることになった。 箱は相棒がお手の物。 中目桐の集成材にオイルステンで着色した上にラッカー四回重ね塗り。 出来るだけ軽くコンパクトに仕上げた結果、トーレンスTD124とほぼ同じサイズになる。 夜の音だ。 いや、スケベな音、と言ったほうが近い。 演奏者のある意味いい加減な、投げやりな音のあしらいが、聞き手をいい気分にリラックスさせる。 ちょっと悪さをする音を出す、これが難しい。 ひょっとして、縦のものを横にしたから出せる、ふんといいたくなる悪さの味わいなのかもしれない。 ピアノの濁ったタッチをちゃんと出せるなんて、たいしたものだ。 

スイスLENCO製G99型(英国で購入したため、パネルにはGOLDRING MADE IN ENGLANDとレタリングされているが実際はスイス製)

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