2007年04月26日

トーレンス キャビネットは重要です

トーレンスをレストアしている担当者がキャビネットについて言ったことを書いてみます。 「トーレンス124型専用キャビネットが発売当時どのように紹介され、ユーザーに提供されていたかは今となっては不明です。 こちらにレストア依頼で送られてきた数多くのTD124から判断して、オリジナル・キャビネットの数が驚くほどすくないのに気付きます。 その代わり、発売された国々で各々独自に作られたキャビネットばかりです。 材質・形は様々ですが、私が見聞きしたもので仕上げの良さと音質において判断するに、スイスSchopper製TP12専用キャビネットに勝るものはないと思います。 キャビネットTP12 キャビネットでまず問題となるのは、材質です。 チップボード、合板、単板、単板につき板を張ったものなどさまざまです。 チップボードと合板は、はっきり言って論外であります。 単板は広葉樹系のもので、各国で産する木材で作られており、硬軟さまざまなものがありますが、大体堅木が用いられており、専用キャビネットに較べ共振周波数が高目であり、再生音にピークとディップが発生しやすく、音にある種のクセを付けてしまいます。 その結果一旦共振点が合致してしまうと、音色に不自然な色がついてしまい、結果、演奏家の表現法に不自然なアクセントを与えてしまうことも発生します。 つき板仕上げは、内部は比較的やわらかな単板で表面のつき板が堅木ですから、キャビネットとしては好条件です。 しかし、トーレンス本体とのマッチングを考慮して音への制動をデザインする領域まで達したキャビネットは残念ながら見当たりませんでした。 これらのキャビネットに付属している足はたいていゴム製の大きなものがついており、ターンテーブル本体の振動のアース体としての機能をまったく果たしていません。 TD124我国における124型とユーザーの不幸な原因の一つは、オーディオ熱がピークに達した1970年代には、すでに124型の発売が終わっていたという事実です。 60年代後半のベルトドライブを経て、ダイレクトドライブが主流となり、その中でガラード401のみがかろうじて入手可能であり、以後のガラードに対する根強い人気の一因となったのは否めません。 私自身も、124型の存在は知っていたのですが、現行商品として販売された実物を見ることはありませんでしたし、その再生音の良さについて当時我国のオーディオ評論家たちは言及しなかったと記憶しております。 本体自体がそもそもまぼろしなのですから、専用キャビネットのことなど、ユーザーは知る由もありません。 箱いろいろ最近、トーレンスを取り扱う特集記事がアナログ雑誌にしばしば載りますが、まず、オリジナル・キャビネットに搭載された124型を見ることはありません。 ありきたりのキャビネットで試聴しては、片手落ちも良いところで、そうした記事を見たユーザーはこれがスタンダードなんだな、と思ってしまうのも致し方無いことです。 専用キャビネットはスイスでユルク・ショッパー監修のもと、木工技師のアンドレアス氏が製作したもので、構造と働きについては、私たちのホームページ http://www.thorens-td124.jpで公開しておりますので、詳しい説明は省きます。 あくまで丁寧に整備された124型、あるいは奇跡的にコンディションの良い124型なら、この専用キャビネットは最大限優れた効果を発揮してくれます。 最後に、私個人としてこういうことを言わせていただいたのは、ニセモノのあまりに多いオーディオ界にあって、これ以上被害者を出したくない、という思いからです。 このような被害者が増えると、アナログオーディオ全体が駄目になってゆくのを恐れるからであることをご理解いただきたいと思います。」 以上、担当者の意見でした。 過激な箇所もありますが、正直な意見であり、大筋で正しいことを言っていると思います。 確かに、いい加減なキャビネットが多過ぎますし、124はキャビネットで音質が決まるといっても過言ではありません。 これは実際に音を聴いてわかったことです。


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