2007年05月12日

ホームセンター建材GRF製作実録‐4

木を切る今日はT氏が、組立作業に忙しいので、代わりに僕が書く。 箱が大体できたところで、肝心のスロート部の工程に進む。 スロートとはスピーカーユニット後部の開口部のことで、箱のノドチンコである。 この大きさによりホーンを通過する音の量が決定する。 力木それをどうやって決めるかは、スピーカーを睨み、聞き、触って感じるしかないらしい。 気韻を読むということか。 今回使用するフィリップスのユニットは実録‐1で解説したので繰り返さないが、パンパン張りのあるコーン紙から出るメリハリのある甲高い音をどのようにエンクロージャーで響かせるか。 ミューズを感じながら、GRFのスロート部をアレンジするしかないのだそうだ。 このスピーカーのもう一つのヒネリはバッフル板を二枚中空にするという、普通やってはいけないことをしている。 今日はここまでその中空部分に迷うことなく、リュートの胴の内部を模して、孔雀の形で力木を配してしまった。 これが吉と出るか凶と出るか。 製作者は自信満々である。 フィガロの結婚を鼻歌まじりにうたって木を切っている。 ごらんのとおりスピーカーの縦横奥行きの比率がきれいだから、期待できそう。 面割りして木を切るのに三晩、組立始めて今日で三日目。 嬉々として熱中する姿は、ものをつくる面白さを体現している。 皆、音のためあらん限りの全智全能を尽くす。 没我趣味というものに、時間を忘れ、労力惜しむことなく、夢の中に描く世界に溺れる。 そう、彼は溺れている。 すっくと立つ木の構造物は、彼にとってはサモトラケのニケにも見えるのか。 今、工程はひとつの絶頂を迎えている。 形が顕れて面白く、音が出るようになれば、また、興が湧く。 面倒くさいものを飽きずに嬉々と作り続ける。 音楽が出てくればいいなと、彼のうしろ姿が語っているようだ。

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