
カートリッジをいじっていたら、あっという間に時間が過ぎてしまった。 LEAKモノーラルカートリッジがビリツキが出た。 点検したら、二個あるダンパーのうち、一個が切れている。 修理することにした。 このMCカートリッジは、なかなかしたたかな音質でLP再生に重宝している。 1950年代後半にLEAK DYNAMIC PICKーUP として、LP と SPカートリッジ一個づつと一点サポートアーム、そしてMCトランスが1セットとして発売された。

1.5グラムという当時としては驚異的な軽針圧で、実際それでトレースしてしまうからすごい。 デッカと同じくカンチレバーがない針先の構造で、コニカル針という円錐状針がユニーク、緻密で奥ゆかしい音色なのにやるときはやるのが、コテコテのブリティッシュの再生音だ。

NIXA、デッカ、ブランズウィック、HMV、コロムビア、PYEなど英国盤は何でも来いだ。 分解して針を支える棒を包む前後のゴムのうち一本が切れていたので、取り替えた。 組みなおしてみるとビリツキは消えて、いかにもフラットな特性だよ、といいながら、耳を官能に酔わせる音を出す。

おそらく、針がやっと出るくらいギリギリ小さなの穴なども、あけっぴろげでない、深みのある音質に貢献しているのかもしれない。 音の浸透力が魅力であり、加えて音色に誘われて、引き込まれてゆく。 独自のやり方で品格ある最高水準を目指す「こころざし」をひしひしと感じるピックアップだ。 くどい誉め方になるが、このカートリッジは、音楽に頻繁に見え隠れする「秘めたる恋」の背を押して打ち明けさせるのが得意である。 普段気付かないピアノ伴奏のゆかしいアルペジオに聞き入ったりもするのだ。
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