2007年07月19日
TD124 センタースピンドル軸受部の耐久性
TD124型のセンタースピンドル部の働きと現状、そしてレストアなどについては先にHPで開示いたしましたが、今回は多くの皆様からその耐久性についてお問い合わせがございましたので、書いてみることにします。 トーレンス124型には2種類のセンタースピンドルボックスがあることは先に述べましたが、シャフト部はどちらも共通であります。 経年変化はまれに不純物によると思われる錆が見受けられることがありますが、きわめて堅牢に製造されているため、簡単な研磨とクリーニングで除去が可能ですので問題はありません。 先端のボールベアリングにしても、スピンドルボックス内のオイルの有無に関わらず、変形・磨耗はまず起こりません。 それは底部ベアリングプレートがプラスティック製のためその柔軟度によりベアリングの磨耗を防いでいるのです。 さて、メタル製スピンドルボックスの耐久性については、今までのレストアの経験において不動となったものはひとつもありませんでした。
しかし、メタル金属ですので、当然錆びが発生します。 これは酸化被膜と呼ぶべきものですが、実はこの状態が大変良い状態と言えるのです。 どういう事かと申しますと、124型のセンタースピンドルシャフトは、通常、スピンドルボックス内壁に直接当ってはいないわけです。つまり酸化被膜が発生するということは、シャフトが内壁に直接接触していない証拠であり、シャフトと内壁がとてもよい状態にあるということになります。 この酸化被膜はオイルが注入されていない場合は空気によるものであり、オイルが注入されている場合はオイル自体の酸化とゴミ等不純物、またはメタル本来のアクによるものです。 両者の場合とも、きちんとした研磨とレストアを行えば、初期性能に復帰させることは可能です。 むしろ粗悪なオイル、またはグリスなどを注入されたスピンドルボックスのようが、やっかいな状態になっているケースが多いのです。 この場合、錆びがより深く金属内部に浸透していることもありますし、ゴミ等の不純物により壁面が少々削り取られていることさえあります。 しかしここまで悪化してしまったとしても、レストアの研磨により少々ゆるめになる場合もありますが、規定よりやや多めのオイルを注入すれば、問題の無い範囲まで回復します。 こちらでレストアさせていただいた124型のメタルスピンドルボックスには、このような悪化した状態のものもありましたが、何ら問題も無く回復しました。 定期的なメンテナンスを施せば、長期の使用に充分耐えてくれます。
さて次に初期型プラスティック製スピンドルボックスについて述べてみます。 粗悪なオイルの注入、ゴミ等の不純物をそのままに長期間使用しつづけると、回転の不具合が生じるのはメタル製と同様ですが、素材がプラスティックなので、メタル製と違い酸化現象はもちろん生じないのです。 ですから不純物によるオイルの酸化現象による錆びで内壁を削り取ることが無いかわりに、比較的早い時期に内部にゴミによる目詰まり現象を起こし、回転に支障をきたします。 もうひとつはプラスティックの変形があります。 この現象が起こると、スピンドルシャフトを締め付けるので、メタル製ボックスとは較べられないほどが負荷をモーターに加わります。 したがって、この現象が発生した場合、特に長期にわたって使用された場合、モーター本体内部に大きななダメージを受けていることもあります。 こうした状態のスピンドルボックスやモーターを素人の方が修理すると、致命的なダメージを与えることになりますので、非常に危険です。 それにオイルが注入されていれば良いのですが、オイルが無いと事態はさらに悪化します。 プラスティック製と仮に呼びましたが、使用されている素材は硬質ではなく、やや柔らかさを保ったもので、多分にテフロンまたはナイロン系の成分を含んでいると推察されます。 レストア作業工程において、入念な研磨を完了したプラスティック製内壁を見ると、薄く油を引いたような滑らかな艶かしさのある光沢を宿します。 作られて50年も過ぎているにもかかわらず。 感触も、ご想像の通り、肉感的です(写真を拡大してご覧下さい)。 その耐久性・経年変化はほとんどなく、ただ変形のみと申せましょう。 思うに50年前、金属で間に合うところを非金属素材を使用するということは、当時としてはある種のプライドでありステイタス、誇り高き最新技術であったと思います。 そして124型においては音質面のメリットも十二分に考慮されたうえでの非金属素材の採用だったはずです。 その素材、原材料と製造工程は、当時トーレンス社のトップシークレットだったに違いありません。 これまで数多くのヴィンテージモデルに使用されたテフロン・ヴァイニル・フェノール・ベークライト等といった古典的化学加工品は製造されて50年以上経てもクリーニングと研磨により新品を思わせる艶を取り戻してしまうのです。 驚くほどの長寿命といえましょう。 初期TD124型プラスティック製スピンドルボックスは変形以外のトラブルにはこれまでのレストアを通じ、遭遇したことはありません。 おそらく、メタル製に負けないくらいの耐久性があると推測します。 また、このプラスティックが油・オイル等との化学反応による変質を危惧なさっていられる方がおられましたら、それにはこうお答えすることにしましょう。 当時第一級の性能を謳った124型において、そのような欠陥品をトーレンスの技術陣が許すはずも無く、充分吟味して採用したに違いない部品であると。
しかし、メタル金属ですので、当然錆びが発生します。 これは酸化被膜と呼ぶべきものですが、実はこの状態が大変良い状態と言えるのです。 どういう事かと申しますと、124型のセンタースピンドルシャフトは、通常、スピンドルボックス内壁に直接当ってはいないわけです。つまり酸化被膜が発生するということは、シャフトが内壁に直接接触していない証拠であり、シャフトと内壁がとてもよい状態にあるということになります。 この酸化被膜はオイルが注入されていない場合は空気によるものであり、オイルが注入されている場合はオイル自体の酸化とゴミ等不純物、またはメタル本来のアクによるものです。 両者の場合とも、きちんとした研磨とレストアを行えば、初期性能に復帰させることは可能です。 むしろ粗悪なオイル、またはグリスなどを注入されたスピンドルボックスのようが、やっかいな状態になっているケースが多いのです。 この場合、錆びがより深く金属内部に浸透していることもありますし、ゴミ等の不純物により壁面が少々削り取られていることさえあります。 しかしここまで悪化してしまったとしても、レストアの研磨により少々ゆるめになる場合もありますが、規定よりやや多めのオイルを注入すれば、問題の無い範囲まで回復します。 こちらでレストアさせていただいた124型のメタルスピンドルボックスには、このような悪化した状態のものもありましたが、何ら問題も無く回復しました。 定期的なメンテナンスを施せば、長期の使用に充分耐えてくれます。
さて次に初期型プラスティック製スピンドルボックスについて述べてみます。 粗悪なオイルの注入、ゴミ等の不純物をそのままに長期間使用しつづけると、回転の不具合が生じるのはメタル製と同様ですが、素材がプラスティックなので、メタル製と違い酸化現象はもちろん生じないのです。 ですから不純物によるオイルの酸化現象による錆びで内壁を削り取ることが無いかわりに、比較的早い時期に内部にゴミによる目詰まり現象を起こし、回転に支障をきたします。 もうひとつはプラスティックの変形があります。 この現象が起こると、スピンドルシャフトを締め付けるので、メタル製ボックスとは較べられないほどが負荷をモーターに加わります。 したがって、この現象が発生した場合、特に長期にわたって使用された場合、モーター本体内部に大きななダメージを受けていることもあります。 こうした状態のスピンドルボックスやモーターを素人の方が修理すると、致命的なダメージを与えることになりますので、非常に危険です。 それにオイルが注入されていれば良いのですが、オイルが無いと事態はさらに悪化します。 プラスティック製と仮に呼びましたが、使用されている素材は硬質ではなく、やや柔らかさを保ったもので、多分にテフロンまたはナイロン系の成分を含んでいると推察されます。 レストア作業工程において、入念な研磨を完了したプラスティック製内壁を見ると、薄く油を引いたような滑らかな艶かしさのある光沢を宿します。 作られて50年も過ぎているにもかかわらず。 感触も、ご想像の通り、肉感的です(写真を拡大してご覧下さい)。 その耐久性・経年変化はほとんどなく、ただ変形のみと申せましょう。 思うに50年前、金属で間に合うところを非金属素材を使用するということは、当時としてはある種のプライドでありステイタス、誇り高き最新技術であったと思います。 そして124型においては音質面のメリットも十二分に考慮されたうえでの非金属素材の採用だったはずです。 その素材、原材料と製造工程は、当時トーレンス社のトップシークレットだったに違いありません。 これまで数多くのヴィンテージモデルに使用されたテフロン・ヴァイニル・フェノール・ベークライト等といった古典的化学加工品は製造されて50年以上経てもクリーニングと研磨により新品を思わせる艶を取り戻してしまうのです。 驚くほどの長寿命といえましょう。 初期TD124型プラスティック製スピンドルボックスは変形以外のトラブルにはこれまでのレストアを通じ、遭遇したことはありません。 おそらく、メタル製に負けないくらいの耐久性があると推測します。 また、このプラスティックが油・オイル等との化学反応による変質を危惧なさっていられる方がおられましたら、それにはこうお答えすることにしましょう。 当時第一級の性能を謳った124型において、そのような欠陥品をトーレンスの技術陣が許すはずも無く、充分吟味して採用したに違いない部品であると。