2007年08月24日

TD124 ノイズリダクション・キット

今日紹介しますのは、TD124の可能性を追求して研究開発に没頭するユルク・ショッパー氏の最新試作品です。 これはアイドラーホイール用に開発されたノイズリダクション・キットです。 THORENS TD124 ノイズリダクション・キット スイスから届いたキットを早速124に取り付けてみたところ、きわめてローノイズであり、また音色と音質などにおいて好結果が得られました。 チャコールグレーの薄い防振用ゴム製ワッシャーが2枚と特殊テフロン製白色ワッシャーが1枚。ご存知のとおり、ユルク・ショッパー氏はTD124のパーツをオリジナルに基づき、また部分的にはオリジナルの思想をより発展させた性能をもたらす製品を製作販売しておりますが、これは今まで、TD124にとって重要なポイントでありながら無視されてきた部分にスポットを当てています。 ショッパー氏はオリジナル品と同等のものを制作することは、このパーツに関しては簡単だったはずですが、彼はさらにもうひとしねりして、このキットを創り上げました。 オリジナルはテフロン製のワッシャー1枚をアイドラーシャフトに嵌め込んだだけです。 これだけで発売当時は性能上問題はありませんでしたが、発売より50年たった現在、レストア時に拡大鏡でチェックすると、これが磨り減っているのが多々見うけられます。 もちろん、レストアして、これらは修正作業により正常な形状に戻して出荷していますが、やはり、新品とまではいかないのが現状でありました。 このテフロンワッシャーに関しては、他のTD124用パーツとは異なりエージングされて更に性能が向上する部品ではありません。 ワッシャーと専用グリースしかし、このキットを使用するには問題がひとつあります。 装着時にステッププーリーの調整が不可欠であるということです。 また、製造年代によりアイドラー中心部の軸受の高さ、全高が微妙に異なるため、ステッププーリーだけではバランスが取れず、モーター・プーリーあるいはモーター本体まで上げなければならないケースも出てきます。 代替品(オリジナルではない市販品)ではさらに異なる調整が必要になります。 
ステッププーリーと重量級プラッターに挟まれて双方から強い圧力を受けたアイドラーホイールの中心部は台風の目のような状態となります。 アイドラーホイール中心のシャフトはセンタースピンドルのように軸受壁面に触れずに回転するのとは異なり、大仰に言えば強い圧力により楕円運動を強いられていると考えられます。 すなわち、強いノイズエネルギーが発生する、この部分がトランスミッションノイズのポイントであるとユルク・ショッパーは看破したのです。 オリジナルのテフロンワッシャーは、振動をほとんど吸収せずに、コの字型金具が連結したアイドラー・サスペンションを媒体にしてシャシーにノイズをアースさせているのは、以前このブログでもお話ししたとおりです(5月28日アイドラー・サスペンションの秘密)。 ショッパーの試作ノイズ・リダクションキットは、この方法とは異なる働きをします。 まず、薄いゴムワッシャー。 これを2枚重ねたのは、アイドラードライブ方式に対する理解と研究の結果だと、充分に見て取れます。 厚いゴムワッシャーが1枚では逆に振動ノイズを伝導体となってしまうのです。 薄いゴムワッシャー2枚を特殊テフロンワッシャーできっちりと抑え込んでノイズを減少させる。 しかしこれではオリジナル品のような振動エネルギーのアイドラーサスペンション経由のアース効果を減らしてしまうのではないか、という疑問が浮かびます。 よくよく考えてみると、アース効果というのは、一方通行ではなく双方向なのです。 つまりショッパー氏のキットはアイドラー・サスペンションから逆方向から伝わってくるシャシーからの振動ノイズをシャットアウトする一方、オリジナルより強固に製作された特殊テフロンワッシャーががっちりとシャフトを抑えてアイドラーシャフトの振動ノイズを最良の状態でアイドラー・サスペンションに伝導するという構造になっているのです。 こうして、アイドラーの無駄な動作をコントロールしつつ、かつ大幅なノイズの低減をこの試作キットはもたらします。 以上T氏。 
僕は、この数週間、実地にテストしているが、音質や音色に副作用はまったく無いと断言できるし、最上のトルクを常時得られるという予想外の効果があったのもうれしい。 ただし、彼が注意したとおり、このキットの装着には周辺部品の精巧な高さ調整が不可欠。


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