2007年09月01日

TD124 センタースピンドルのメンテナンス

今日もT氏のコメントです。 トーレンス124型の2種類のセンタースピンドル、すなわちプラスティックタイプとメタルタイプは、レストア時の調整法が異なります。 標準的なメタルタイプは、わずかなオイルで調整が可能ですが、プラスティックタイプはオイルをやや多めに注油しなければなりません。 しかし、両タイプとも、レストアを完了してから、或る程度の期間が経つと、軸受ケース底部のメタルパッキンより、オイルが沁み出す現象が起こります。 これは整備不良というのでは有りません。 124型においては、この底部メタルパッキンは完全なる密閉構造にはなっておらず、ごく少量のオイルを一定期間に沁み出す(追い出す)ことにより、オイルの新旧の交代を図っていると考えられるのです。 もし本当にオイルの沁み出しを防ぐつもりなら、ここにナイロン・キャップをはめて、オイルがたれるのを防げるはずです。 事実、他のプレイヤー、英コニサーやレンコなどは、オイル漏れを防ぐナイロン・キャップがはめ込んであります。 さて、ここでひとつ疑問が生じます。 すべてのオイルが流れ出てしまわないか、と。 心配ご無用。 トーレンス124型はのセンタースピンドル軸受はオイルのドブ浸けタイプではなく、先ほど書いたように少量のオイルで最上の動作が可能です(メタルタイプ)。 スピンドル軸受部の内壁は、回転のアタリが出ることにより、一度油膜が形成されたら、回転は正常に続きます。 軸受底部のプラスティックプレートに、ベアリングから加重されて自然変形されたクボミが出来、そこにオイルが自然と集ってオイル溜りポイントが出来るように設計されています。 レストアの際には、長期の安定性を考慮して、通常以上のオイルを注入して、3カ月ほどの使用ののちに、ベストの状態になるようにしてあります。 それ以降になると、ユーザーがメンテナンスをしなければなりません。 その方法については、現在メンテナンス・マニュアルを制作中ですので、それを読んでいただければ、レストア後の性能水準が或る程度維持できるようになると思います。 プラスティック軸受タイプの場合、レストア完了後にメタルタイプよりも多量のオイルを注入して、発送しています。 したがってより多く、より長期間にわたり沁み出てくる場合があります。 しかし、ある期間を過ぎるとほとんど気にならなくなります。 この安定期を過ぎた後に注入するオイルは、回転の円滑性の保持よりも、音質に変化をもたらします。 オイルによる粘性抵抗値の変化が再生音に微妙な影響を与えるのです。 この事実は逆から言えば、オイルの注油量によってレコードプレイヤーのダンピングファクターともいえる値をユーザー自身でコントロールできるのです。 これもトーレンス124型を所有される方のみに許された、アナログオーディオの贅沢なウマミなのです。


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