2007年11月03日

TD124 Mk.IとMk.IIの本質的相違点とレストアの可能性

HPにMk.IIを出品させていただいたせいか、Mk.IとMk.IIについてのご質問を数多くいただいている。 そこのところについて、T氏が以下に説明する。
IもII型も、それぞれ開発された時代にあって、数年先の未来の音を想定して設計製造されたものです。 Mk.I が発売開始された1958年は、モノーラルレコード全盛時代の中、ステレオLPが発売され始めた年でもありました。 いわゆるLPレコードの全盛時代です。 ですから、発売開始時のMk.Iはモノーラル盤再生の性能がとても重要でした。 また、黎明期のステレオ盤の音作りにしても、英デッカSXL2000番台/SB番号のオリジナル盤や、英EMIASD/SAXの初期、そして米RCAリヴィングステレオの同時代初期ステレオ盤の鮮烈なカッティングを以下にダイナミックかつ色彩感濃厚に再生するかも見据えていたのです。 当時のオリジナル盤を聞く方には痛いほどよくお分かりになると思いますが、1950年代末ステレオ初期盤の録音再生方法は、1960年代後半になると明らかに異なってきます。 英DECCAはSXL2000番台から6000番台に、英EMIはASD WHITE/GOLDから赤黒半円レーベルに移行していくように、録音方式と再生装置(トランジスタ式アンプリファイアーやブックシェルフスピーカーの出現)の変化は、プレイヤーの音作りのスタイルにも大きな影響を与えました。 特にレコードに刻まれる周波数レインジの拡大は年々向上してゆきました。 必然的にカッティングの情報量は増大していきます。 そうなるとMk.Iのようにひとつひとつの音に性格を与える丁寧な再生表現では、LPレコード時代後半の制作スタイルの適切な再生はちょっと苦しくなります。 そうした時代の要請を見越して、トーレンス社が出した答えが1964年前後に発売したMk.IIモデルでした。 その開発に要したコストは当時としては巨額だったそうです。 Tangential Tonearm 1Tangential Tonearm 2







しかし、そのMk.IIも数年後には主力の座をTD125というベルトドライヴ型に譲ります。 これはTD124の性能が劣ったからではありません。 製造コストが掛かりすぎたからです。 その頃になるとオーディオはすでに世界市場になっていました。 米国のみならず、日本も重要なオーディオ消費市場に成長したのもこの頃からでしょう。 くりかえしますがTD124Mk.IIは性能のせいではなく、コストのせいで市場から姿を消したのです。 Mk.IとMk.IIの違いは周波数レインジの表現方法をどのようにするか、にあります。 ひとつひとつの音に実在感を与えたMk.Iから、よりパースペクティヴなMk.IIにオーディオ全体の流れが移っていったのです。 現役時代は日進月歩のオーディオ世界市場で『ロールスロイス』と見なされたプレイヤーでした。 今日、このヴィンテージを、現役当時の性能に復帰させ、ファインチューニングでより高性能をもたらすレストアが可能です。 スイスのショッパー氏はこれをニュー・ヴィンテージと呼びます。 デザインはクラシック、性能は50年前のそれを超え、最高水準の音質を保ち、しかも将来的にも修理可能です。 レストアされたTD124は、現代では特異な存在であると同時にきわめて正当な製品であるならば、確かにニュー・ヴィンテージという呼称も、矛盾は生じないはずです。 




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