2008年05月15日
プーリーを推理する
昨日の話。 朝遅く雨が降り始めた。 水曜日は休日なのだが、T氏は精力的に作業をしている。 ガラード301は、もっと良い音になるはずだという。 
何をしているかというと、プーリーを磨く。 朝思いついて道具を作り、それでプーリーを慎重に慎重に磨いているのだ。 寸分狂わずに磨くのは、多少どころか相当の技術を要する。 最後はフェルトを使い、手の感触のみで。 数時間も集中して磨く。 音を出して驚いた。 ガラードが上質のメリノを着込んで現れたのだ。 音は別人である。 なめらかな静けさが背景に広がり、音は絹の肌触り、粋な音の切れよう。 すーっと音が立つ。 みずみずしさが違う。 低音の弾みが違う。 強面のガラード301が、ほっとやさしい表情になって、音楽をもくもくと湧き上がらせている。 プーリーという小さな部品に、心を込めれば、品が際立つ音を出すようになる。 レストアはちゃんと回るだけでなく、ちゃんとした音楽が出せないと。 そのために僕らは徹底して試聴テストを繰り返している。
磨く前でも、十分すぎるほど通常のガラードの音は超えていたのだが。 音の肌触りが粗いのは301だからしようがない、とあきらめるか、まてよ、と想像力に遊ぶか。 T氏はプーリーを推理した。 そのために数時間集中した。 機械では不可能な調整の領域。 結果、報われた。 それがはっきりと音に出ている。
プーリーの研磨には特殊な材料だけでなく、技術と集中を要するので、くれぐれも素人の方はマネしないよう。
プーリーの研磨には特殊な材料だけでなく、技術と集中を要するので、くれぐれも素人の方はマネしないよう。