2008年05月31日

アイドラー型とベルトドライブ型の負荷変動

レコードプレイヤーにとって機械的負荷変動による回転数の変化は重要なものであり、様々なレコードプレイヤー達が独自の対処法を工夫しています。
古典的なアイドラー型であるガラード301の場合、プーリー、アイドラー、プラッター各部の接触面の抵抗値が重要であり適格に設定されれば何ら問題はないのですが、あくまで理想的になされた場合であり、現実はそうは巧くいかないものです。 301はTD124のように複雑な変換系を持たないため、負荷の影響をダイレクトに受けやすいといえます。 モータートルクが強いためにアイドラーがプーリーに蹴られて跳ねるという現象が考えられます。 それはほんの小さなものですが、これにより回転ピッチが細かく振るえる事になり、再生音に対しての影響は滑らかさにやや欠けます。 それを解決するには、各部を適確に調整するしかありません。 最小限に押さえ込んでもやはり負荷変動は残るわけですが、301の工夫はモータートルクによって解決しています。 センタースピンドル底部で大きな負荷をかけられた回転を、モーターが強力なトルクにより補っているのです。 TD124はもっと内部に複雑な動力変換系を持っているため、その働きは異なります。 書くと大変長くなりますので、ここではプラッターの重量と回転系の負荷値の有機的な設定及びモーターの作用が負荷変動を緩やかにすること、とだけ述べておきます。 ガラード301とTD124の負荷変動に対する反応の表れ方の違いは、301は小刻みに、TD124は緩やかに回転ピッチが変化します。 その影響は再生時に音場の変化、定位感に関わってきます。 音質面で言えば301にピアノ再生に於いてやや音にうわずりがみられます。 lTD124はこの点は有利で回転ピッチが緩やかに変動するため301のようなピアノに関する影響は少ないです。 しかし管楽器等の長めの吹奏において音の色彩感が微妙に揺らぎますが、管楽器事態がそれほど安定した音程を保つものではないので演奏者の技術的なものか、負荷変動の影響なのか聞き分けは難しいと思われます。ベルトドライブ型の初期においては、綿密に計算されたモーターとプラッターの駆動力と慣性力がゴムベルトの接地面の抵抗値によりコントロールされていたのですが、やがて電子コントロールによって回転数が所定のものとなるように変化していきます。 これは同時代のDDモーターの弱点であった音のふらつきから教訓を得、DD型と異なるベルトドライブ型が動力伝導をベルトで行って、ゴムベルトが緩衝材として働くため負荷変動による回転の変化を滑らかにすることが可能であり、再生音にその影響を受けにくくするようになっています。 DD型はこの負荷変動に対してモーター自体の多極化とプラッターの慣性力を増大させる事により対処してきましたが、ベルトドライブ型もこれには無関心でいる事は出来なかったと見え、プラッターの重量化の相対化が計られていきました。 しかしベルトドライブ型とDD型の相違点は、DD型がモーター以外速度をコントロールする術を持たなかったのに対し、ベルトドライブ型はベルト自体による抵抗値があるためより自由に設計できました。 ベルトドライブ型が出始めた頃、ベルト自体の幅が現在のものと比較すればやや広いものであった事はこの抵抗値を利用していたと言えます。 DD型がモーターの多極化とプラッターの重量化の増大化により自らの欠点を克服した事はベルトドライブ型にとっては驚異であり、更なる高性能化を余儀なくされる事になりました。 ベルトドライブ型もDD型もプラッターの重量を増やす手法をとることになりましたが、その際問題になったのはベルトの接地面の大きさでした。 簡単に言ってしまえばベルトがプラッター側にくっつきすぎる、モーターがプラッターの回転にあおらられる事です。 SN比の改善で思いプラッターがそれなりの役目果たすのですが、ゴムベルトの幅の広さがそれを阻害してしまい、それゆえ、ベルトは細くなり一部は糸ドライブ化して行ったのです。 初期においてモーター、ベルト、プラッターが最適なバランス取りされていたものがやがて大きく重いプラッターと小型のモーターで駆動するタイプへ。 しかし問題は、この方式では機械的なブレーキが何らプラッターに働かずだだ滑らかに回転する轆轤のようなものでアイドラー型に比べSN比だけが取り得のレコードプレイヤーになってしまいました。 このタイプのベルトドライブ型の負荷変動は、ほとんど無いに等しくノイズ等の発生もありません。確かに立派な音であり、高SN比ですがどこかステレオギミック的な騙し絵的に思えるのです。 アイドラードライブ型に見られる負荷変動に対する一種の粘り強さがありません。 負荷変動を限りなく0 に近づけた結果、音楽の再生に於いて重要な役割を果たす音の弾みが薄れてしまい、どこか白々しい響きをリスナーに与える結果となってしまいました。 ベルトドライブ型に比べればアイドラー型は多くの無駄な部分を抱えていますが、シンプルさが全て好結果を生むとは限りません。 アナログ的な側面から見ればベルトドライブ型は最終的にはCDの音に限りなく近づいて行くように思われます。
以上T氏


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