2008年06月15日

アイドラー型とベルトドライブ型プレイヤー

ベルトドライブプレイヤーは1960年代から徐々にアイドラー型プレイヤーのシェアを切り崩していき、70年代に入ると全盛を迎える事になります。 国内でもDDモータープレイヤーが出現するまでは、ほとんどがベルトドライブ型で、やがてDD型へと変わります。 しかしベルトドライブ型はその後も廃れる事なく、改良を加えながら形を変化させ現在まで生き延びて、今ではほとんどがベルトドライブタイプになってしまいました。 なぜベルトドライブ型のレコードプレイヤーが、現在まで生き長らえる事が出来たのか、考えてみようと思います。 そうすれば、何故アイドラー型レコードプレイヤーが廃れてしまったのかも解ってくるのです。 現在、レコードプレイヤーは市場に無きに等しく、数種類のDDプレイヤーが細々と販売されているような状態です。 もっぱら市場を賑わしているのは、海外製品です。 そのほとんどが、どこかで見たようなベルトドライブ方式のプレイヤーです。 プラッターの外側にベルトをかけた場合、プラッターの半円近くベルトが掛かっています。 インナープラッターを持つタイプも同じです。 つまりモーターからの動力を伝達するのに、アイドラー型に比べより多くの接触面が必要になるという事になります。 これは振動という点から見ると問題です。 必然的に駆動モーターは、より小型が有利となります。 一方アイドラー型は、接触面積からすれば点接触に近いため、プラッターを駆動するには強力なモーターが必要です。 ベルトドライブ型に比べ、大きく強力な、それでいて静かなモーターです。 アイドラー型が衰退していった原因の一つは実はここにあったのです。 大量のモーターを生産しないと利益が上がらないために、コストがかかり過ぎるのです。 また、構成部品数でも、アイドラー型はベルトドライブ型に比べかなり多く、コストもより多く必要になります。 アイドラー型プレイヤーは生まれた時から完成体として出現した為に、部品数を簡略化する事は出来ません。 回転切替えや微調整の構造にしても、ベルトドライブのように電子回路に任せる事など出来ないので、複雑な機械式伝達機構を備えることになります。 コストの問題はTD124を製造していた時代、トーレンス社にとって頭の痛い問題でした。 TD124マーク兇比較的短命に終わったのもそうした理由があったからです。 一方、ガラードは401を生産し続け、ベルトドライブ時代、DD時代を生き抜いてきました。 これは立派だった、と言えるのではないでしょうか。 アイドラー型プレイヤーを聞き慣れた者から見た場合、ベルトドライブ型は妙な音質として聞こえてしまうのは否めません。 あまり出力の大きくない真空管式のアンプリファイアーで大型のフロアスピーカーを駆動した場合、ダイナミックマージンがトリッキーで、どこか上滑り気味な再生音となって聞こえます。 ピアニッシモからフォルテに向かいフォルテッシモに到達した際に、音が逃げるように感じられるのです。 到達した瞬間に音の方向性が変化してしまう。 それを解消するには、スピーカーを十分制御可能な出力を持つアンプリアイアーが必要です。 ベルトドライブプレイヤーはアンプリファイアーの助けなくては、スピーカーに対して力を発揮出来ません。 トルク不足が問題かどうかは不明ですが、アイドラー型にはこの傾向は見られないので、やはり無関係ではありますまい。 特に重量級のプラッターを持つタイプでは、定速回転の制御をプラッターの慣性質量に依存しているので、SN比の点では有利ですが、音楽的な面での表出という点では、聞けば聞くほど妙な感覚を覚えます。 少々意地悪く言ってしまえば、ベルトドライブ型プレイヤーという物は、ユーザーの為と言うより、製造会社の為のものではないかと思えてくるのです。 製造法においても小型で静かなモーターさえあれば、あとのパーツは既製品のマテリアルから流用したり、削り出したりすればそれで最高級なものが出来上がってしまうのですから。 TD124や301のようにアルミ鋳物を苦労して大量に製造しなくても良いわけであり、モーターもシャーシーから分離しているので、手の込んだものを必要とせず、製造コストは問題にならないくらい安くあがるはずです。 これが現在でもベルトドライブ型が幅をきかせている大きな理由です。 もちろん、アイドラー型プレイヤー全盛期と現在では、オーディオ事情が異なっているのは確かです。 それでもなお、ベルトドライブプレイヤーが1台何百万円もするというのは如何なものでしょうか。 以上T氏


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