2008年06月29日

スウェーデンから届いたフォノイコライザー 4

古いレコードを長い間蒐集されている方々にとって、判断の難しいところは、なんといっても再発盤が、オリジナルと同じイコライザーカーヴなのか、それともRIAAにきりなおされているのか。 たとえば、ここにモーツァルトのレクイエムのレコードがある。 ステファンドム1955年12月2日、モーツァルト命日にウィーン・シュテファン大聖堂で執り行われたミサの実況録音盤。 こればかりは、初版で聴かないと、あの向こう側がかすんで見えそうなくらいに広い教会の空気が伝わってこない。 箱







だから、古いレコード好きは初版を探す。 それだけの違いがあるからだ。 オリジナル番号は504/5APK、写真のレコードのセットは14111/2APM とあるから、これは第二版になる(オリジナルと称して販売しているところもあるので要注意)。 どちらも箱・ジャケット・解説の装丁・仕様はまったく同じである。 違うのは二つ、レコード番号とジャケット裏左下の日付が違う。 APKセットは57年4月、APMセットは59年1月。 2年足らずの違いだが、これが悩みの種になる。 再発APMのセットもオリジナルと同じイコライザーカーヴで再生してよいものかどうか。 いままでは、3つか4つのポジションを持つモノラルプリアンプでRIAAかAESでトーンコントロールで調整して判断していたが、はっきりとはこれ、と断定できないのが本当のところだ。 レコードを販売している当人が十数年イコライザーをいぢって再生していながら、このテイタラク。 セット














それが、今日、このフォノイコライザーでは、一発でAESと判明した。 切り替えたとたん、自然な音の広がりとひずみ感のないダイレクトな再生音。 音楽が一気にあふれ出る。 フォノイコライザーにトーンコントロールはないが、その分誤魔化しなしに、判断がつく。 英BEAM-ECHO DL7-35 メインアンプに直接入れてみたが、周波数帯域のつながりが自然というか、滑らかなので、面白いように出る音色に彩られて、表情豊かにミサの音場が再生される。 盤の状態まで忠実に音に出る。 オリジナル盤にあった、高い空間に広がる音楽に臨場しているという霊長類の快感が、この第二版では薄れている。 それが2年足らずの日付以上の差となって、如実に聞き分けられるからすごい。 わずかな違いのために、この世界の住人は初版盤を探し回り、イコライザーがああでもないこうでもない、と騒ぐ。 困ったものだ。 T氏によれば、『風格を感じさせる』再生音はいまどきのオーディオ機器からは得がたいものなのだそうだ。 つい、もう一枚、と際限なくレコードを聴きたくなる。 困ったものだ。  つづく 


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