2008年06月30日

スウェーデンから届いたフォノイコライザー 5

英デッカのイコライザーカーヴについて
EQ10フォノイコライザーの解説には、各レーベルのバス・ロールオフ/バス・ブースト・ターンオーバー/トレブル・カット・ターンオーバーの数値表が載っている。 これを見ても、製作者がタダモノでない片鱗を見せる。 たとえば、英デッカのLPは以下のようになっている。
---------------------------------------------------------Bass----Bass--Treble
Name/Source/Year---------------------------------Roll-off--turnover--turnover
Decca / London-microgroove-ffrr >1949---100Hz----450Hz----3180Hz
Decca / London-LP-ffrr > 1951----------------------------300Hz----2122Hz
Decca / London-microgroove-ffrr > 1952---------------450Hz----3180Hz
Decca /London < 1955----------------------------70Hz----500Hz----1590Hz
RIAA > 1954------------------------------------------50Hz----500Hz----2122Hz

現在発売中のフォノイコライザーは、こうした具体的な数値に基づいてffrrポジションを設定しているのだろうか。 それらの説明書には、ただデッカカーヴとあるだけで、いまとなっては、恥ずかしいくらいに怪しい。 閑話休題。

上の数値表によると、英デッカは1949年から1955年までの7年間に、4種類ものLPカーヴを採用していたことになる。 英デッカカーヴといっても、実は4種類もあったのだ。 LP黎明期、グルーヴノイズの急速な軽減、レコードプレイヤーの性能向上、そして周波数レインジの拡大など、再生装置や録音・製盤技術の変化に即して、彼らは適切なカーヴを模索していった。 もちろん、このフォノイコライザーは4種類のデッカカーヴすべてに対応可能。 LXT2676ためしにセルのブラームス3番を聴いてみる。 RIAAではたしかに鈍重すぎる。 次に1955年以前の70Hz-500Hz-1590Hz を試してみるが、これも弦楽器群の響きがうわついている。 次の1952年以降のOFF-450Hz-3180Hz に切り替えると、ドンピシャ。 音楽がどっとあふれ出る。 弦の艶と、コンセルトヘボウ特有の彫りの深い濃やかな響き。 周波数レインジの広がりの自然さ、ビーンと大地に突き刺す低弦の芯。 スピーカーから音が離れてオゾンとなって空間を満たす。 5人(うち女性2人)が実際に聴いて、全員音楽を感じたのだから、ほんものだ。 次回のグレイリストから、英デッカ盤は4種のデッカカーヴを表示する予定だ。 そうでなければ、イコライザー表示なんて無意味だ。 古いレコードを聴く立場から言えば、これまで発売されたフォノイコライザーがどれも見当違いだったのを残念に思っていたが、やっと、良い方向を目指すモデルが現れた。 まず、LP再生を楽しくさせる音質がいかに大切かを、具現してくれている。 つづく





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