2009年08月11日

TD124最初期プラスティック軸受けの現状と今後 2

以下T氏
総生産台数が10万台弱のTD124のうち、プラスティック軸受けを搭載しているモデルは14,000台あまり、7台に1台しかないわけです。 しかも現存するプラスティック軸受けモデルのほとんどが不完全な状態にあります。 これはプラスティック・ブッシュの狂いが原因で、スピンドルを引き抜いた時点で直ちに狂い始めるものもあれば、3日後、1ヵ月後、3ヵ月後、あるいは半年後と狂いが生じる時期もモデルによりまちまちです。 従って、一年を目安とした単位でレストアを実施せねば、プラスティック軸受けを安定した性能に戻すことは不可能です。
初期モデル最近プラスティック軸受けの初期モデルを所望する愛好家が増えているのは、TD124のヴィンテージ市場での人気の高まりと、初期型モデルがもつ独特の音に魅かれたせいかとも思われます。 しかし、一番の理由は、これら初期モデルの奏でる音楽が、good reproduction の精神に満ち溢れていることにあります。   このgood reproductionこそが、これからのヴィンテージ・オーディオ市場の成熟に寄与するスタイルであり、音のみを云々する姿勢ではなく、ゆたかな家庭生活での再生音と音楽の楽しみ方、あるいは生理的に気持ちの良い再生というコンセプトを、多くのレコード愛好家がいつか知らず意識し始めたのはうれしいことです。
しかし、昨日も述べたように、市場にあるプラスティック軸受けモデルで、一見正常に回転しているものは、実は改造されており、本来の音質を奏でることはほとんどないのです。 その他のものは、スピンドル自体が回らないほどプラスティック部が膨らんでしまって、くわえこんでいるはずです。
これらプラスティックスピンドルボックスを本来の姿にするには、誠意と根気と良心が必要であり、はっきり言ってそうしたクラフツマンシップを持っている者は、わが国には、いや世界においても、そうはいないはずです。 
当時トーレンス社はやろうと思えば最初からメタル軸受けを製造するだけの充分な技術は持ち合わせていたはずです。 それを何故、わざわざプラスティック製のものを開発したのでしょうか。 もちろんガラード301にはない独自の音楽性を確立させるため、それともうひとつ、good reproductionに適うゆたかな音楽性を醸し出すためだったのではないでしょうか。 ですから、私たちはプラスティック製軸受け部を捨てることをしないで、レストアしてみようという意思を持ち、技術を編み出し、成功しました。 
もし、ご自分でプラスティック軸受けモデルのTD124 をお探しになるのでしたら、それなりのリスクを覚悟の上で購入しなければなりません。 素人のみならず、プロでさえもそれらの品がオリジナルであるかどうか、欠品部品がないか、プラスティック軸受けの狂いがとのくらいあって、修理可能かどうかを知る事はかなり困難なのです。
プラスティック軸受けの何たるかを知らない修理人により手を加えられ、その結果、初期TD124にある工業芸術品としての生命がどんどん奪われてしまう、今私が一番心配していることです。


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