2009年08月25日

プラッター重量の違いと音質の変化

最近は比較的ローコストな新製品のレコードプレイヤーが市場に出回ってきています。ほとんどがベルトドライブ型でなかなかスタイリッシュです。でもベルトドライブという駆動形式は上級機種と同一なので、騙された気がするのは私だけでしょうか?同じ駆動形式でありながら異なるのは、細部の簡素化とプラッターの重量ぐらいとなれば、ユーザーはKgに対してお金を払っていることになります。
プラッターの重量は、この種のプレイヤーにとっては音作りのカギとなる所です。各ブランドは、ラボラトリやオフィス等で関係者を集めてテストを行い、音決めをしていきます。その際数種類の重量プラッターを用意して、比較ヒアリングも実施します。こうしてのち、1枚のプラッターが正規品として採用されます。私が疑問を抱くのはここなのです。慎重に音作りされた現代プレイヤー製品群に聴く再生音は、音色の差こそあれ、その表現においてそれほど変わらないのは何故かという点なのです。現代重量級プレイヤーにデジタルアンプを繋ぎ再生すると、その音はCDに近づいてしまうのを随分と経験しました。特に英国製の現行プレイヤーを聴くと、往年の進取の気性と創造性はすでになく、プログラムソースに忠実な再生にばかり重心を移してしまい、残念でなりません。
多くの優れたプレイヤーが考案された50年代から半世紀経ち、技術も飛躍的に進化したはずの現在、さまざまな合金の製造が容易になったにもかかわらず、TD124や301等が持つ音楽的な主体というものに肉迫する現行プレイヤーがついぞ見られない、何故?この疑問がいつも頭にひっかかります。今日のレコードプレイヤーの設計者は、レコードをCDと同様に扱っているように思えて仕方がありません。レコードを大きなCDとして捉えている。
現在TD124のプラッターには三種類あります。鉄製プラッターは落ち着いたしっかりした音が特徴で、低域高域とも自然な伸びが得られます。アルミ製プラッターは全体的に華やかな色彩感に満ち、ワイドレンジですが中低域の押しは鉄製プラッターと異なり、音を押す力より、分解しつつ整えるというかたちをとります。非磁性体プラッターは、カートリッジの磁力によるレコードの吸着現象を起こさないので、大変クリアーな音が得られますが、完全にレストアされたTD124でなければ力を発揮出来ません。このような鉄製、アルミ製プラッター個有の働きのあり方に対し、非磁性体プラッターは無色透明というのがその特長の本当の所であり、組み合わせるTD124の現状態をそのまま表に出してしまうという特性を持ちます。ですから不調なTD124と組み合わせた場合、その問題個所を暴き出してしまいます。このように、TD124にとってプラッターの重量が意味するものは、ベルトドライブ型のような慣性質量としての要素を重要視しているのとは異なり、働きも意味も別のものとして考えなければなりません。
アルミ製プラッターは鉄製プラッターを単に軽量化するために開発されたのではなく、1960年代後半から登場する新しいディメンションのハイファイステレオLPに適応すべくトーレンス社が選択した素材の新しいプラッターでした。 
LPプレイヤーにはプラッターが不可欠です。TD124にとって、重さだけが重要ではなく、材質にも多くの創意工夫が盛り込まれていました。 以上T氏



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