2009年09月04日

家庭の電源 2

電圧変換トランスについては、グレイのTD124は100V仕様でありますので使わずに済みますが、もう一つの変圧作用を行う品に、整流作用を兼ねた安定化電源ユニットが市場に存在し、中にはTD124を用いている方もあると思います。およそ古典型のレコードプレイヤーの場合は、アンプリファイアー等の差し込みに接続するのは避けたほうが良く、理想的にはアンプリファイアーとは別の電源口からとるのが望ましいのですが、現実的に中々難しい所があります。このような場合応々安定化電源ユニットに、全てのオーディオ機器電源を一まとめにして接続するという事になりがちですが、この場合はレコードプレイヤーは電源ユニットに接続せず、他のコンセントからとるほうが良いと思います。安定化電源ユニットを使用する場合は、アンプ専用とした方が良いと考えられ、理由としてはこのような機器が専らアンプリファイアー用に作られており、回転系には不向きであるからです。現在回転系専用の安定化電源等は、市場において私の目にする限り見当たりません。TD124もガラード301もオーディオシステムの内にあっては、ノイズの発生源ではあっても、本質的にはあまり電源ノイズに影響を受けにくい機種ですが、アンプリファイアーへの影響を考えた時には、整流作用のある安定化電源ユニットを使いたくなる気持ちは理解できます。しかし、それに基づく効果は五十歩百歩と言うのが本当の所で、使ってみなければわからないのです。 グレイでのテストではあまり良い結果は得られず、仕掛けが大きな電源ユニット程TD124の音質の変化は大きいと考えられます。TD124はプーリーを上下逆にすることにより、301は50〜60サイクル個別のプーリーを組み込むことにより電源サイクルに対応しており、通常に使用する場合はサイクル変換機のお世話になる事はありません。ではなぜ取り上げたかというと、グレイでは関西など60ヘルツ電源地域にTD124を出荷するにあたって、専用のサイクル変換機を使用しており、この機器を使用するとTD124の回転動作が大変安定するという事に気付いた為で、読者の方々にはあまり必要な知識とは言えませんが、知っていて損は無いと思うからです。 サイクル変換機このサイクル変換機は、50サイクルを60サイクルにただ変換するだけの機器で、整流作用はほとんど無く、ただ正確なパルス波形を作り出すための機器であり、本来は工業用に製造されたものです。従って放熱用の空浄ファンが組み込まれていたりして、大変大きな動作音を出します。そのままでは屋内で使用できるノイズレベルをはるかに超えてしまうので、箱を作って中に入れてあります。いくらかノイズは減少しますが、それでも騒音というには充分です。この機器を導入した経緯は、60サイクル国のお客様の為に、TD124の動作チェックを行う為もありますが、私の愛用する米国レコカットプレイヤーの為でもあります。 rekokutこのプレイヤーは起動時に大きな電流を要する事と、シンクロナス大型モーターを使用しており、かつ変速機能を一切用しない為、正確なパルス波形が無ければ、回転数を合わせる事が難しいプレイヤーである事によります。この変換器を通じて、TD124を60サイクルで駆動すると、興味深い事に、ストロボライトのちらつきが改善され、負荷変動に対しても強くなるようです。例えばプラッターに手を当てて負荷を加え、定回転に復帰する動作を見てみますと、速度変化に応じた復元力が早く、回転数表示ストロボパターンの揺り戻しがきわめて少なくなります。この現象の意味する所は、インダクションモーターであっても、サイクルパルス波形に対しては、何かしらの影響を受けているという事であり、同時に電圧電流に対しては、増減の定兆もさることながら、質も問わねばならないという事を指しております。しかしながら質といっても、電磁波やデジタル系ノイズ等を別として、インダクション型モーターにとって、一番の敵は、電圧電流の変動が一番影響力を与えますので、そのあり方を持って質的な物と考える事と致します。この電圧変動については、通常TD124を使用する場合、屋内で使われるのが常であり、当然様々な家電製品と同居する事となります。これらの家電製品が動き始めたら、よほど配電周りをしっかりしておかないと、電圧電流の降下が発生します。又おのおの家電製品が個別に動いている場合、常に電圧電流は安定せず、細かな電圧電流の変動が発生している事となります。TD124の回転系部やモーターは常にその影響を受ける事となり、TD124のプラッターがその重量と負荷抵抗により、電圧の変動に対してなだらかにするという力があるとはいえ、やはり無理が生じます。この小さな電圧電流変動がわずかに、TD124のピッチを狂わせ、再生音は落ち着きを失います。エディカレント機構はこの状況ではあまり役に立ちません。エディカレント機構の働き自体は、モーターに安定した負荷を与えると同時にモーターを管制するものであり、電圧変動に対してはあまり効果は期待できないのです。ここまで読み進めていただくと、読者の皆様には私の言わんとする所がおわかりになってきたと思います。すなわち、TD124の実力を正しく発揮させるには、電圧電流の高低の是非より質が問われるべきなのです。しかしながら、現在この問題を解決する決定的な電源ユニットは見当たりませんので、現状使用者の皆様の努力次第といわざるを得ないのです。 Power Conditioner良質の電源ユニットに関しては、スイスのユルクショッパーによるものがあります。その製品は、スイス国内の電圧が最近上昇したことにより、制作せざるを得なかったものであり、スイスでは230~40 ボルトを180~200 ボルトにステップダウンした電圧でTD124に供給するユニットです。我が国は電圧マージンの項でもお話ししましたとおり、最初から100 ボルトという有利な電源電圧値であるため、電圧上昇を考えずにただ整流器としての機能のみを有するものとしなければならず、その必要性は半減するために、現在日本市場にこの製品を投入する気は無さそうで残念ではあります。私がスイスで視聴した限りでは、中々の実力を秘めておりました。



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