2009年09月13日
TD124 フル・レストアの勘所
グレイのTD124のレストア料金は、一般の修理を行っている店から比べれば高価であると思われる方がいらっしゃるでしょう。 私たちはその価格以上のレストアを行っていると自負しています。 私たちのレストア作業を見ていただければお分かりになると思いますが、3mmのねじを磨いたり、ボルト用の穴をクリーニングしたり、Eリングも磨き、主要部品全てのクリーニング研磨を行い、モーターを分解、組み立て、チューニング、アウタープラッターの留め金の中もクリーニング研磨、その他諸々を私一人で責任をもって行い、外注等は一切せずTD124を初期性能以上に高度化するようにしています。
通常の修理店がこの様な作業を一貫して実施するとは到底思えません。 作業を行う本人が、ほとんど病気と思っている位ですから、試行錯誤の末、フルレストア以外はやらないと決めたのです。 TD124のユーザーに損をさせない為です。 私の経験からいえば、オーディオ製品以外の製品の修理において、中途半端な修理程、時間とお金を費やしながら結果としてフルレストアには及ばないという事を知っているからです。 その例として、20年ほど前、私はルノー社の古いオープン車を所有しておりましたが、フルレストアするには時間と、場所とお金が足らず、仕方なく部分、部分を修理しながら乗っていましたが、最終的にはどうにもならず友人にあげてしまいました。 時間とお金はどうにかなりますが、場所だけはどうにもならず、車一台分解してパーツをおいておけるガレージなど、そうそうあるものではないからです。 あの時、もしこのようなガレージがあれば、2〜3年かけて完全にレストア出来たのにと今でも悔やんでいるのです。 これに比べればTD124は、はるかに場所を取らずレストア出来き、発売当時の性能を上回るものとしてユーザーにお返しする事が可能です。 つまりフルレストアを実現出来るのです。 苦労してレストアしなくても、部分修理で充分と考える業者の方や、レストア代金が高額と捕らえるユーザーの方々、いずれも私の答えは否です。 同業者の方からは、TD124をレストアするにあたって、勘所を押さえておけばそれなりの音が出るし、ユーザーはそれで満足するから、もっとツボを抑えて簡潔にしたら、という意見もいただきました。 しかし私の信条として、利益の為にレストアを行っているのではないので、ご意見無用でした。 さらに彼らのいうような修理に近いレストアは過去のものであり、今日のオーディオ界の状況では、ヴィンテージ製品を現行品と同じステージに立った製品として、ユーザーに受け入れられ始めており、ヴィンテージ品と言えども、発売時と同等かそれ以上の性能を持たなければ意味がないのです。 私の考えるTD124は、高速道路をハイスピードで走行出来るサルーンカーであり、同時にサーキットに持ち込んでも充分実力の発揮できるスポーツカーでもあると捉えています。 TD124は発売当時、世界最高の性能を有するレコードプレイヤーの一つであり、現在においても充分その力を発揮できるレコードプレイヤーであると信じます。 ここで皆様に考えていただきたいのは、モーター車で言えばエンジンですが、これのみを修理した車で、高速走行や、サーキットで250キロ以上出す事をよしとするでしょうか?そんな事をしたら、命がいくらあっても足りません。これを可能にするには、それなりの事をしなければならないのです。 ただし趣味的な問題と多様性における、相対性な思想により許されているのが現在のビンテージオーディオ界の在り方であります。 TD124のレストアにおける勘所等は実は何一つないのです。 これまで何度も入ってきましたとおり、全ての動作が連結して働かなければ、たとえ見た目は正常であっても再生音の音楽的な問題とは又、別の次元の事であり動作と音楽的表現の在り方を正すには、完全フルレストアを行うのが最善の方法であり、これによりユーザーに利益をもたらす事が出来ると確信しております。 TD124のそれぞれが、どのような音楽を奏でるか、そういうことを念頭に置きながら、レストアしています。 以上T氏
今、T氏はシャシー裏面を磨いている。 まる一日かけて。
このシャシーは鋳型からの型抜けが良いのだそうだ。
そのあたりは、僕には判らない。
そして2万番台から3万番台あたりのシャシーは
あまりピカピカにしては音がまとまらなくなるそうだ。
僕には何故だかわからない。
この写真くらいにしておくのが、響きが良いと言う。
レストアした数百台のTD124を、一台一台ちゃんと聴いて、
体得したのだろう。
今、T氏はシャシー裏面を磨いている。 まる一日かけて。
このシャシーは鋳型からの型抜けが良いのだそうだ。
そのあたりは、僕には判らない。
あまりピカピカにしては音がまとまらなくなるそうだ。
僕には何故だかわからない。
この写真くらいにしておくのが、響きが良いと言う。
レストアした数百台のTD124を、一台一台ちゃんと聴いて、
体得したのだろう。