2009年09月25日
TD124の駆動電圧値について
国内でTD124を使用するには、100Vで駆動する場合がほとんどですが、中にはわざわざ110V、115V、117V等の米国電圧値を使用されている方もおられます。 TD124を駆動するこれらの電圧値の在り方について、100Vで充分実用になり、音質面も最良の結果を得ているために今までそれほど関心を払ってはいませんでした。 私たちの販売するTD124、又はレストア済みのTD124は、グレイ制作のメンテナンスマニュアルに明記しております。しかしながら最近TD124の人気が上がるにつれ、100Vより、110、115、117等の電圧値を用いた方が良いとされる文がちらほら見受けられ、それが動作や音質面の評価にも及んでいます。 この電圧の高低における動作と音質のかかわり合いを、一度明確な形で現さねばならないと考え始めたのです。 この様な電圧値の問題を明らかにしなければ、今後TD124を使ってみたいというユーザーに、正しい情報が与えられず、TD124に対しての誤って評価されてしまう事は充分考えられるからです。
まず初めに、なぜ今頃になりTD124の電圧値が取り沙汰されるようになったか? 以前のTD124の立場は、かつての面影もなくただ動いているだけで充分と言えるものが大半でした。 今日のように実用に耐えるという代物ではなかったのです。 それゆえ電圧は問題とはならず、まして電圧の差による音質の差など無きに等しいと言えるものでした。 この様な問題が出始めたという事は、ある意味喜ばしい事ですが、TD124の基本構造と働き方等を考慮せず、ただ電圧の高低でのみの動作状態や音のクオリティが決定されるかのような考え方はTD124の本質とはややかけ離れたものです。 TD124はその独特の構造と働きゆえ、電圧値の差位における反応もまた独特で、電圧の高低がそのまま動作や再生音の音質に直結した形となって表れにくいレコードプレイヤーであり複雑な様相を呈します。 さてTD124の電圧値の問題について書く前に、各国の電源事情について述べたいと思います。私の持っている「PRO AUDIO PRICE LIST」の巻末に、各国の電圧表が記載されており、96年時の各国の電圧は次の通りです。アメリカ120V、英国240V、デンマーク、オーストリア、スペイン、フランス、イタリア、127V等々で、その他の国々もそれぞれの電圧値が存在していますが、いずれの国も国内の電圧値より高い場合がほとんどです。100Vは日本と韓国のみというのが現状で、それぞれの国々の電源事情を考慮してTD124の配電部を見ると三つの異なった電源セレクト部が設けられています。 そのポジションスケールもかなりバリアブルな設定でたいていの国の電源電圧に対応する事が出来ます。 日本での使用は左上の100V~120Vの電圧ポジションになります。 TD124の電源セレクト部を見れば世界中のあらゆる国に輸出することを前提として作られており、その動作は、それぞれの電圧ポジションスケールの中でなら問題なく使用することが出来、音質も同様な物とみなすことが出来ます。 しかしTD124の主輸出国はアメリカ合衆国で、アメリカ基準電圧で駆動した方が良いと言うのであれば、それはおかしな話です。 例えば117Vが最も良い音がするというのであれば、他のポジション電圧スケール内でも、同様の現象が見られるという事は充分に考えられ、その場合その電圧値以外の国の人々は、TD124から最良の音を引き出せないという事になります。 またアメリカ合衆国でも、現在120Vに統一されているようですが、TD124の発売当時の電圧はどれほどの値であったのか、又は州により異なっていたという事も考えられます。 ちなみに私の所有するフェンダー社製ギターアンプは60〜70年代製造品で、サンフランシスコで作られ動作電圧は110Vとなっています。 この様な事情を考えに入れれば、国内のTD124の使用において、110V、115、117V等の電圧値を良しとするのは、根拠として大変弱いものであると思われます。
結論としては、我国においてTD124を駆動するに当たっては、その電圧セクションスケール内、100V~120V間でどのような電圧値を用いても良いという事であり、もし仮に110、115、117V以上の電圧値を与えなければ、正常な動作や音質が得られないとなれば、それ自体がすでに問題です。 何故ならTD124の電源セレクトポジションには、100Vで使用可能と表示されているからです。 しかしながらどうしても110V、115、117V等で駆動しなければ使用不可能であるような場合、TD124自体の長年の使用によるモーターの不調が最も大きな要因ですが、さらに加えてミッション部の整備不良という事も充分考えられます。 仮にTD124にこの様な現象が発生した場合、その多くはエディカレント制動マグネットを正常な位置から後ろへ設置して、エディカレント機構の働きを失わせる事により定回転を可能にする作業がなされます。 この様な事が行われたTD124は、ダンピングコントロールや、ダンピングファクター成分は失われてしまい、TD124本来の力は失われてしまいます。 これらは、姿形はそのままでもその働きはもはやTD124ではなく、ブレーキの効かない車同然であり、動作と両生音にとって重大な影響を及ぼすものであります。
以上T氏
まず初めに、なぜ今頃になりTD124の電圧値が取り沙汰されるようになったか? 以前のTD124の立場は、かつての面影もなくただ動いているだけで充分と言えるものが大半でした。 今日のように実用に耐えるという代物ではなかったのです。 それゆえ電圧は問題とはならず、まして電圧の差による音質の差など無きに等しいと言えるものでした。 この様な問題が出始めたという事は、ある意味喜ばしい事ですが、TD124の基本構造と働き方等を考慮せず、ただ電圧の高低でのみの動作状態や音のクオリティが決定されるかのような考え方はTD124の本質とはややかけ離れたものです。 TD124はその独特の構造と働きゆえ、電圧値の差位における反応もまた独特で、電圧の高低がそのまま動作や再生音の音質に直結した形となって表れにくいレコードプレイヤーであり複雑な様相を呈します。 さてTD124の電圧値の問題について書く前に、各国の電源事情について述べたいと思います。私の持っている「PRO AUDIO PRICE LIST」の巻末に、各国の電圧表が記載されており、96年時の各国の電圧は次の通りです。アメリカ120V、英国240V、デンマーク、オーストリア、スペイン、フランス、イタリア、127V等々で、その他の国々もそれぞれの電圧値が存在していますが、いずれの国も国内の電圧値より高い場合がほとんどです。100Vは日本と韓国のみというのが現状で、それぞれの国々の電源事情を考慮してTD124の配電部を見ると三つの異なった電源セレクト部が設けられています。 そのポジションスケールもかなりバリアブルな設定でたいていの国の電源電圧に対応する事が出来ます。 日本での使用は左上の100V~120Vの電圧ポジションになります。 TD124の電源セレクト部を見れば世界中のあらゆる国に輸出することを前提として作られており、その動作は、それぞれの電圧ポジションスケールの中でなら問題なく使用することが出来、音質も同様な物とみなすことが出来ます。 しかしTD124の主輸出国はアメリカ合衆国で、アメリカ基準電圧で駆動した方が良いと言うのであれば、それはおかしな話です。 例えば117Vが最も良い音がするというのであれば、他のポジション電圧スケール内でも、同様の現象が見られるという事は充分に考えられ、その場合その電圧値以外の国の人々は、TD124から最良の音を引き出せないという事になります。 またアメリカ合衆国でも、現在120Vに統一されているようですが、TD124の発売当時の電圧はどれほどの値であったのか、又は州により異なっていたという事も考えられます。 ちなみに私の所有するフェンダー社製ギターアンプは60〜70年代製造品で、サンフランシスコで作られ動作電圧は110Vとなっています。 この様な事情を考えに入れれば、国内のTD124の使用において、110V、115、117V等の電圧値を良しとするのは、根拠として大変弱いものであると思われます。
結論としては、我国においてTD124を駆動するに当たっては、その電圧セクションスケール内、100V~120V間でどのような電圧値を用いても良いという事であり、もし仮に110、115、117V以上の電圧値を与えなければ、正常な動作や音質が得られないとなれば、それ自体がすでに問題です。 何故ならTD124の電源セレクトポジションには、100Vで使用可能と表示されているからです。 しかしながらどうしても110V、115、117V等で駆動しなければ使用不可能であるような場合、TD124自体の長年の使用によるモーターの不調が最も大きな要因ですが、さらに加えてミッション部の整備不良という事も充分考えられます。 仮にTD124にこの様な現象が発生した場合、その多くはエディカレント制動マグネットを正常な位置から後ろへ設置して、エディカレント機構の働きを失わせる事により定回転を可能にする作業がなされます。 この様な事が行われたTD124は、ダンピングコントロールや、ダンピングファクター成分は失われてしまい、TD124本来の力は失われてしまいます。 これらは、姿形はそのままでもその働きはもはやTD124ではなく、ブレーキの効かない車同然であり、動作と両生音にとって重大な影響を及ぼすものであります。
以上T氏