2009年10月10日

ステッププーリーの鳴きについての考察-1

TD124初期型モデルに搭載されている皿型ステッププーリー特有の鳴きは、チリチリと虫の鳴き声に似た異音が主で、レストアを行うときいつも悩みの種であり、その対処法として、専用オイルを使用せず数種のグリスを用いてこの鳴きを止める法もありますが、万全の対処法ではありません。 まず、再生音に対する影響を考慮しなければならないからです。 TD124のタイプによっては、高域のいまひとつの伸びやかさの再生が、阻害されやすいからです。 グレイが販売するTD124スペシャルモデルの場合は、長期にわたるモーターチューニングによりモーター自体の共振同波数を低く抑えることでクリアーできるのですが、レストア品のようなオリジナルに準じたものの場合、このようなグリス等は再生音の自然さを得にくくするため、出来るだけ専用オイルを用いる調整法を行うのがベストです。 鳴きは常に発生するとは限らず、全く発生しない場合もあり、いつ発生するかもはっきりしないのが現状です。 私が実施するレストアでは発生率は2割程度で、それもベルトの馴染みや回転部のこなれにより除々に収まってくるのがほとんどでした。 TD124愛好家の方は、この鳴きを受け入れた上で、TD124独特のステッププーリーを持つモデルのみが保有する音色の魅力に存在意義を認めておられると感じたから、この現象についてこれまで述べてきませんでした。 それでもTD124に対しての知識が不慣れな方やDD型モータープレイヤーに慣れた方等にとって静かなリスニングルームでのヒアリングに際して、故障ではないか心配されることでしょう。 そこで今回、なぜ皿型ステッププーリーがこの鳴き現象を発生させ、またどうすれば日常使用に際して防止できるか書いてみたいと思います。
まず皆様にご理解いただきたいのは、TD124のプレイヤーはDD型やベルト型プレイヤーと比べてみれば、その動作音は決して静かではないことです。 その理由は、回転系部の接合、接点が多くその構造をみればベルトドライブ型とアイドラー型両方の特徴を持っており、それぞれの形式のプレイヤーの弱点や欠点も同時に持っています。 従って回転系ノイズの発生もほんの些細なことにより起こりやすいのです。 ではトーレンス社はレコードプレイヤーにとって弱点となりやすい危険を冒してまでこのような機構のプレイヤーを作り上げたのか? ユーザーの方にはここのところを是非理解して欲しいと思っています。 それは良い音質を得るために必要であったからなのです。 極論すれば、TD124の動作音が気になる方はDD型や糸ドライブ型の新しいレコードプレイヤーを求められるべきであり、そちらのほうが精神衛生上好ましいと思います。 TD124の動作音は、いわばTD124自体の構造上特有のもので、それを受容できなければいかし方がないからです。 当社のレストアではこのような事はあまり無く、仮に発生してもそれなりの対応を行っており、お客様に理解していただいています。 これはあくまで今後TD124を初めてお使いになる方への私からの提言としてご理解ください。それでは順次動作ノイズ、ステッププーリーの鳴き等について述べていきます。 
以上T氏 つづく



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