2009年10月12日
ステッププーリーの鳴きについての考察-3
皿型ステッププーリーになぜトーレンス社はこだわったのか
このタイプの持つ本質的な働きがただの速度変換器としての役割ではなく、もっとTD124自体の本質的な部分と深くかかわっていたために、トーレンス社は皿型のそれをあえて採用し続けたのです。 ここではその役割のひとつであるモーターとアイドラーに対する回転安定器として意味を持つとだけ述べてみます。 トーレンス社もステッププーリーの不安定な動作には苦労していたと思われます。 皿型ステッププーリーはいくつかの種類があり、回転軸用シャフトも三種類あります。 まず最初期モデル、上部回転軸ベアリングはステッププーリー本体にがっちりはめ込まれて動きませんし、その位置もそのあとのモデルと比べるとベアリングは最上部に位置します。 回転軸用シャフトのベアリングが当たる部分は円形ドーム型で、ベアリングは円接点で設置されています。 次の初期モデルあたりでは、ベアリングは最上部から少し下がって置かれ完全に固定されるのではなくステッププーリーを持ち上げるとベアリングが少し沈みオイルが注入しやすくなっています。 また回転軸用シャフトのベアリングの接地面がフラットになっているものや、ガラード301のモーターのローター・シャフト底部にみられる中心軸ポイントに凹みが設定されているものも見受けられます。 このモデルの製造番号は3000~6000番台あたりになります。 以降のものはこのタイプはあまり見られず通常タイプの円形ドーム仕様がほとんどです。 その後ステッププーリー頂部のオイル注入口にプラスチック製のキャップが取り付けられたものが出始めますが、付いていたり付いていなかったりで、どのような製造番号から始まったのかわかりません。 このようなステッププーリーの仕様変化を考えてみれば、たとえ発売時の新品であっても宿命的な問題として、ステッププーリーの鳴きは本質的に存在していたと思われ、それでも使い続けた理由はこの時期のTD124に、音質面で欠かせなかったためなのです。 ここで注意しなければならないのは、このタイプは本来プラスチックスピンドルとの組み合わせが順当で、20000番台を超えたあたりまでこのステッププーリーのTD124がスピンドルをメタルに変更したにもかかわらず、ある種の豪放な響きを保っていた点は大変貴重である事が理解できます。 それなりの欠点を承知で使うだけの価値はあるはずです。
メンテナンスでの鳴き止めについて
レストアではまだまだ充分なエージングはとれません。従ってユーザー側に鳴き防止、改善のメンテナンスを行っていただくことになります。 鳴きが発生した場合、その原因はほとんどがベルトによるモータープーリー側とステッププーリー側の汚れが主で、これはクリーニングしてください。 レストア終了、出荷時にはきれいにしてありますが、ベルトが新品の場合モータートルクの上昇によりカーボンやピッチがその接触面につきやすく比較的早めに取り除くほうがよいでしょう。 同時にステップーリーのアイドラーの接触部、アイドラー本体、プラッター内側等のクリーニングも効果的です。 ステッププーリーのオイル注入は最小限にとどめておくほうがよいです。 このような作業をある程度行っておけば、ステッププーリーのわらいを未然に防ぐ事が出来、音質的にも良い結果が得られます。 回転系部の汚れは、大変デリケートな反応を示すので、ユーザーのこまめなメンテナンスは欠かせません。 TD124は、DD型、糸ドライブベルト、ドライブ型とも、単純なアイドラープレイヤーとも異なったワンアンドオンリーのレコードプレイヤーであり、レストア後ユーザー自らがその性能を保つには、それなりの努力を惜しんでは高い性能と再生音を維持することはできません。この皿型ステッププーリーを持つTD124は、当時最高のレコードマニアやオーディオ愛好家のために作られた製品で、DD型や新しいレコードプレイヤーのようにフリーメンテナンスとはいきません。ユーザーに育てていただかなければならない種類のレコードプレイヤーであることを皆様には知っていただきたいと思います。 以上T氏 この項おわり
このタイプの持つ本質的な働きがただの速度変換器としての役割ではなく、もっとTD124自体の本質的な部分と深くかかわっていたために、トーレンス社は皿型のそれをあえて採用し続けたのです。 ここではその役割のひとつであるモーターとアイドラーに対する回転安定器として意味を持つとだけ述べてみます。 トーレンス社もステッププーリーの不安定な動作には苦労していたと思われます。 皿型ステッププーリーはいくつかの種類があり、回転軸用シャフトも三種類あります。 まず最初期モデル、上部回転軸ベアリングはステッププーリー本体にがっちりはめ込まれて動きませんし、その位置もそのあとのモデルと比べるとベアリングは最上部に位置します。 回転軸用シャフトのベアリングが当たる部分は円形ドーム型で、ベアリングは円接点で設置されています。 次の初期モデルあたりでは、ベアリングは最上部から少し下がって置かれ完全に固定されるのではなくステッププーリーを持ち上げるとベアリングが少し沈みオイルが注入しやすくなっています。 また回転軸用シャフトのベアリングの接地面がフラットになっているものや、ガラード301のモーターのローター・シャフト底部にみられる中心軸ポイントに凹みが設定されているものも見受けられます。 このモデルの製造番号は3000~6000番台あたりになります。 以降のものはこのタイプはあまり見られず通常タイプの円形ドーム仕様がほとんどです。 その後ステッププーリー頂部のオイル注入口にプラスチック製のキャップが取り付けられたものが出始めますが、付いていたり付いていなかったりで、どのような製造番号から始まったのかわかりません。 このようなステッププーリーの仕様変化を考えてみれば、たとえ発売時の新品であっても宿命的な問題として、ステッププーリーの鳴きは本質的に存在していたと思われ、それでも使い続けた理由はこの時期のTD124に、音質面で欠かせなかったためなのです。 ここで注意しなければならないのは、このタイプは本来プラスチックスピンドルとの組み合わせが順当で、20000番台を超えたあたりまでこのステッププーリーのTD124がスピンドルをメタルに変更したにもかかわらず、ある種の豪放な響きを保っていた点は大変貴重である事が理解できます。 それなりの欠点を承知で使うだけの価値はあるはずです。
メンテナンスでの鳴き止めについて
レストアではまだまだ充分なエージングはとれません。従ってユーザー側に鳴き防止、改善のメンテナンスを行っていただくことになります。 鳴きが発生した場合、その原因はほとんどがベルトによるモータープーリー側とステッププーリー側の汚れが主で、これはクリーニングしてください。 レストア終了、出荷時にはきれいにしてありますが、ベルトが新品の場合モータートルクの上昇によりカーボンやピッチがその接触面につきやすく比較的早めに取り除くほうがよいでしょう。 同時にステップーリーのアイドラーの接触部、アイドラー本体、プラッター内側等のクリーニングも効果的です。 ステッププーリーのオイル注入は最小限にとどめておくほうがよいです。 このような作業をある程度行っておけば、ステッププーリーのわらいを未然に防ぐ事が出来、音質的にも良い結果が得られます。 回転系部の汚れは、大変デリケートな反応を示すので、ユーザーのこまめなメンテナンスは欠かせません。 TD124は、DD型、糸ドライブベルト、ドライブ型とも、単純なアイドラープレイヤーとも異なったワンアンドオンリーのレコードプレイヤーであり、レストア後ユーザー自らがその性能を保つには、それなりの努力を惜しんでは高い性能と再生音を維持することはできません。この皿型ステッププーリーを持つTD124は、当時最高のレコードマニアやオーディオ愛好家のために作られた製品で、DD型や新しいレコードプレイヤーのようにフリーメンテナンスとはいきません。ユーザーに育てていただかなければならない種類のレコードプレイヤーであることを皆様には知っていただきたいと思います。 以上T氏 この項おわり