2009年10月26日

EMT930、927の真の役割と本質

薦められたEMTが思ったほど音を出してくれず、TD124を求められるお客様が増え始めています。 その方たちの話をよく聞いてみるとEMTというプレイヤーに対して誤解をされている場合がほとんどなのです。 このままではEMTがオーディオファンに誤解されたままになってしまいます。 そこで今回EMT930、927プレイヤーの本質的なあり方と働きについて述べてみようと思います。 何かしらの役に立つはずです。
EMT930、927は主に放送局の送り出しや検聴用に製作された製品で、純然たるプロユースのレコードプレイヤーです。 いわばプロもしくはそれに相当する知識と経験によって操作されるレコードプレイヤーであり、本質的に明確で、きちんとした音を出す特長を持っています。不出来なコンシューマーユースのレコードプレイヤーに聴かれるような妙に甘ったるい音は出しません。 正確、堅牢を主とした機械であり、プロの現場でラインを構成する部品のひとつでもあるのです。 音の加工、可変に対してその力を発揮されますが、正確な音だしという点では無類の強さを持ち、音ひとつが研ぎ澄まされた切れ味鋭い音を持っています。 しかしながら、EMT本来の働きはお金を稼ぐための道具という側面をも、持ち合わせていることも事実でいわば、ワーク機械と言えるものです。 EMTプレイヤーのこのような性格は、プロの現場では単にひとつの部品、パーツとして役割を正確に果たしますが、ひとたび家庭に持ち込まれ、コンシュマーユースの機器と組み合わされると、それは独裁者の立場に立って、接続される機器の自由を奪ってしまいます。 初期TD124・EMPORIUM仕様モデルは統率者、リーダーとしてオーディオ機器に対して働きますが、EMTの場合独裁的なものとして君臨します。 ワーク機械としてのEMTをユーザーが使用するということは、本来楽しみである音楽を仕事化してしまい、ユーザーは労働者となってしまいかねません。 従って、音がきつかろうが強かろうが、仕事である以上耐えるしかありません。 EMTは音楽を楽しむレコードプレイヤーでは無く、またそのように作られていません。 筋肉質で強い音を出すのはEMTプレイヤーが本質として持っているものでプロの現場では必要な力なのです。 そのような音を出すからと言って音楽が楽しめないと言われても、なぜ?というしかありません。 EMTプレイヤーの特性は何よりリニアでHi-Fi的な忠実度を主眼に置いて作られたものであり、音楽を楽しむというより、音を楽しむ人に向いたレコードプレイヤーなのです。 ではEMTプレイヤーは、本来あるべきプロユースの世界ではどのような存在であったかと考えてみると、いわば水準器としての役割を果たしていたのではないでしょうか。 世界中どこででもEMTを使えば基準音が得られ、それを基に現場で音の可変を操作することが可能で、標準値を出すためのものであると考えられます。 専用イコライザーが組み込まれているのは音色を変化させない狙いがあるのです。 このような点からこのプレイヤーはプロの現場では特殊なものではなく、オーディオファンの方により何か特別なレコードプレイヤーと思われていますが、特殊なのは本来業務として用いるべきEMTを家庭に持ち込むことなのです。 是非知っていて欲しい事は、なぜオーディオ用レコードプレイヤーのカテゴリーが音の加工して送り出す側のプロユースと、音楽を再生して楽しむコンシュマーユースに分かれて売られているか、そして働く場所が違うことはレコードプレイヤーの場合、スピーカーの場合よりその区分ははっきり分かれている事が多いのです。 EMTに限らずスタジオ等では特注で様々な機器が製作され、プロユースの世界では使用する機器類は組み上げるという方法がとられ、EMTも組み上げられる信号ライン上のパーツのひとつである事は知っておかねばなりません。 極論としてEMTを使用するなら、接続されたすべての機材を組み合わせて完全なスタジオの音を再現するのが、たとえその音が結果的に聴くに耐えないハードな音であったとしても、真っ当な方法といえるでしょう。 それこそが本来のEMTなのですから。  以上T氏 




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