2009年11月02日

TD124歯車的動作についての考察

TD124、ガラード301も機構動作で歯車的な働きが強く出たレコードプレイヤーですが、なぜ両機がこのような特性を持つようになったかを考えてみれば、その理由として両機の保有するエディカレント機構の働きが重要な意味を持っています。 つまりエディカレント機構に回転コントロールの一部を預けることにより、両機の機構は歯車的な性格を通常のアイドラードライブより強力にする事が出来たと考えられるのです。 しかしながら、両機の回転機構部を眺めてみてもどこにも歯車など無く、どこが歯車なのか皆様には理解しがたいと思います。 レストアを行った者でなければ分からない事で、歯車というのは形ではなく、回転系全体の働きの内にあり目で見る事は出来ません。さらに述べれば、両機の回転機構では、それぞれ保有する抵抗値と摩擦係数の量が歯車に相当します。 つまり両機の回転系は抵抗値と摩擦抵抗を持って連結されていると考えてください。 このように考えたのち各回転系それぞれの連結部に歯車があると想像してみれば、両機が歯車として動作している事が理解されると思います。 しかしながら、この歯車的な構造を持つという事は、回転が狂わないという点では良いのですが、回転数コントロールがしづらいという欠点があります。 もしピッチコントロールを行えるようにすると、歯車的動作自体が崩れてしまうのです。 そこで用いられたのがエディカレント機構で、これにより歯車的動作はそのままに、回転数コントロールが可能となったのです。 しかしここでエディカレント機構が働くと、歯車的動作に狂いが生じてきてバランスが崩れてしまうという問題が発生します。 ここで皆様には、前文で想像して頂いた回転機構の見えない歯車を取り去ってもらいます。 そうするとなぜTD124の回転部がこのようになっているのか理解できます。 TD124の歯車に相当するのは、各部の抵抗値であり摩擦力です。 つまり歯車的動作時に問題となったエディカレント機構の動作における狂いが抵抗値と摩擦力により解消されているのです。 TD124のアイドラーのステッププーリーや、プラッターに対する圧着力がなぜそれほど強くないのか、アイドラー脱着用のコイルバネのテンションがなぜそれほど高くないのか、ステップドプーリーとモータープーリーがなぜベルトで結ばれそのテンションも強いものではないか等、すべて歯車的動作におけるエディカレント機構による回転ギアの狂いを緩和する目的のため、緩やかな結合力を有しているのです。さて、またまたここで考えなければならないのは、この歯車的思想が一体どこから来たのかという点で、私が考えるにそれはSP時代に用いられたギアドライブプレイヤーを基に発展したものではないかと思うのです。 ギアドライブ型が衰退したのは、SPレコードの音質向上と、LPレコードの登場により動作音が大きいため使えなくなったと考えられますが、このギアドライブ型のギア的思想をそのまま踏襲して形を変えて、発展させた形が両機なのではと考えたのです。 ギアドライブからアイドラー型への移行は主にレコード側からの要請によるところが大きいと思われますが、SPレコードの性能の向上もかなり影響があったと思われます。 さまざまなSPレコードをかけますが、フランス製のSP等はSP特有のノイズがほとんどなく、レベル的にはLPにそん色がないのです。この様なレコードをギアドライブプレイヤーで使用したら、ノイズ的に使い物にならないのではと考えられます。さらにベルト型であれ、アイドラー型であれ、78回転ポジションが無いレコードプレイヤーは、歯車的思想から逸脱したものであると、それは同時にダンピングファクター成分とも無縁な存在となっています。 ダンピングファクターが発生するにはまず、歯車的思想に基づいた構造を有するというのが第一条件であり、次はエディカレント機構の持つ力が重要となってくるのです。 ギアドライブにおける歯車的思想は確かに旧式で古いと言えますが、レコードプレイヤーの回転において、重度な意味を持つ事に今日ではほとんど気付くことはありませんが、現行品のプレイヤーのあまりにも機械的な動作を忘れた機構を見るとき、何か大切な事を忘れてしまっていると考えるのは私だけでしょうか? 以上T氏




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