
最近TD124の再生音を直接聴きに来られる方が増えてきましたが、目的としてTD124の本来の音を聴いてみたい、そしてもう一つは、ブログを読んでホンマかいな?と思って確かめる為。 確かに記述の中にはSF小説的、ホラ話かと感じられる個所があり疑問に思われるのも当然と言えば当然なのです。 しかし来店されたお客様は、数々のオーディオ専門店を巡られた方がほとんどで、店内を見て初めは驚かれるのが通例です。 何しろ店内にはTD124、コニサー、ガラード、レンコ等が適当に置かれており、TD124のレストアも目の前で直接見ることが出来るからです。 さらに再生装置は左がヴァイタボックス、右がロンドン・ウエストレックスと異なったスピーカーが置かれ、モノーラル用には英サウンドセールス社の25cmフルレンジという前時代の代物です。 アンプはオルトフォンの15W×15WのKS601プリメインアンプとリーズナブルな一台のみ、本来EQ10用に英国のパワーアンプもありますが、EQ10はすでにサンプルまで完売の為このアンプは休業中です。 なぜオーディオシステムが通常のオーディオショップのようにマランツやマッキントッシュやもっと上手く鳴らす英国製のアンプを使用しないかは以前にも述べていますが、そのような装置を使用して試聴しても、それはアンプ側に助けられた音であり、TD124の再生音自体を明確にヒアリングすることが出来ないと考えているからです。 つまりどこまでTD124の音であるか判別しにくくなるのです。 このようなシステム構成であっても、来店されたお客様にはそれなりの感動を味わっていただく事が出来るのは、TD124の力であり、オーディオは何より音楽信号の発生体である初めの部分の重要性を明確に認識していただく事が可能だからです。 そのようなお客様の場合、ご自分のオーディオシステムの構成、ほとんどは再構成の問題となってしまいますが・・・。 それにはTD124が最低2台、欲を言えば4台欲しいと言われることがあります。 その内訳は、ステレオ用にMk.2が1台、モノーラル用にMk.1初期型、ステレオ用に中期と後期だそうです。 このような事態を私はトーレンス地獄と呼んでいますが、それはお客様側にとっても楽しい地獄と言えるわけで、それは実があるからです。 それなりの見返りが充分既得できるからこそ喜んで地獄に落ちて行くわけで、薦められたからではありません。 オーディオで一番避けなければならないのは、早急に物事を判断するのは危険でそれがいかに災いとなって自分自身に及ぶか、自らの経験から言えることです。

TD124のレストアにおいても、悪い状態のものでもお客様が満足していれば、こちらからレストアを勧めることはありませんが、そのまま使用すれば良くないことだけはお伝えします。 現在オーディオ界を見渡してみれば、同型のレコードプレイヤーを複数所有したいとユーザーが希望する商品(製品ではない)がどれほどあるでしょうか? ホームオーディオの妙味というのは、さまざまな機材を使用して自分の好みに合う再生音を作り上げる面白さがあり、TD124はその点日本製の特殊なアームを除けばあらゆるアームが取り付け可能で、ホームオーディオでは王道と言える製品です。それらのアームがそれぞれ固有の音楽性を保有しているなら、安定した再生音を得ることができる優れもののレコードプレイヤーとしてアームやカートリッジを取り替えて自分の音を作り上げる行為は、これまた楽しい地獄かもしれません。 このようなTD124はEMT等に代表される業務機とは立場が全く別で、プロユースは組み上げるもので、ホームユースは組み合わせものであることは案外、皆様はご存じないことかもしれません。 ホームユースが個人、固有の音であるのに対して、プロユースは不特定多数のための音であることも知っておかねばなりません。 プロユースの機材をホームオーディオに組み入れることは、ユーザー自らが組み上げる苦労を背負うことで、それはTD124のような楽しい地獄ではなく、本当の地獄の始まりと言え、無限地獄に落ちる可能性が大。 覚悟してかからねばなりません。
以上T氏

このところ、僕はグレイリストを書くのに熱中している。 英コロムビア録音クレツキ/POによるシベリウスの1番が真夜中に地軸を揺るがす大音響の色艶に震え、今朝はエリカ・モリーニのバロックソナタ集を聴いた。 『こする』という行為がこうにまで恍惚をもたらすのか、というくらい、弦のしなり心地よく、基音とそれから派生するもろもろの音と倍音とハーモニクス、演奏家の心情、奏でるヴァイオリニストのみやびの姿気配、それらが楽音になって耳に伝わってくる。 サワサワ、トロリ、その耳に入り様の気持ちよいこと。 さうさう、という感じ。 一層、モリーニが好きになってしまう。
それから、載せている絵は、オランダの友人の奥さんが描いた作品。
彼女、先月にアムステルダムで個展を開いた。