2010年02月18日

オレのガマンもこれまでだ「我国のステレオ・サウンドって ナニ?」再考の巻

音楽を楽しむ限り必ずしもHi-Fiは必要ではありません。 そろそろ本質的な問題にうすうすお気づきになっているのではないでしょうか。 これまでのHi-Fiオーディオは音楽に対してハイフィデリティ(高忠実度)ではなく、音そのもの、つまり物理的な響きに重きを置いていたのです。 音楽ではなく音そのもののリアリティに偏った結果、音をいぢる一部の人のみに満足され、それこそがオーディオでありステレオそのものであると思いこんでしまったのです。 EMTやJBLのモニタースピーカーに代表されるプロ機がコンシュマーユースに入り込んで来たのはそのためであり、音をいぢって楽しむ方々には最高の道具でした。 それらの音が、まさにステレオ・サウンドであり、音楽をサウンドと認識し、音楽よりサウンドを楽しむ、当時のオーディオ機器の再生音にしてもサウンド以外の何物でもありませんでした。 そんな時代だった1970年代、レコードプレイヤーはDD型、EMT、糸ドライブ型で、アームは、SME、サエク、FR、カートリッジはシュアーV15タイプIII等、アンプリファイアーはアキュフェーズ、マークレビンソン等、スピーカーはJBLモーター系等が思い出されます。 アキュフェーズのアンプは毒にも薬にもならない水のような音でしたが、オーディオ関係者に言わせれば、アンプリファイアーの理想の音で、無色透明の色付けされていない音として好評を博していました。 アンプリファイアーが無色透明化し、ゲインの増大としてしか働かないというのは、アンプリファイアーとしての存在価値はどこにあるのか不思議でした。 アキュフェーズと同時期に発売されたパイオニアのM4パワーアンプはトランジスターでA級動作を可能にした野心的で少々甘口の音が良いと言われましたが、モノーラルからステレオ初期に製造された英国製管球アンプの音には比ぶるべくもありません。 マークレビンソンは、若くカッコイイ音でした。 ほとんどのオーナーは、ジャズを好んで再生していたようですが、クラシックの再生音となるとクエスチョンマークがちらついたことを思い出します。 レコードプレイヤーは、何よりレコードから切れの良いかつダンピングがきいた音を引き出すことに主を置くあまり、リズム感の表現が画一的となりました。 JBL社製モニタースピーカーは、Hi-Fiなワイドレンジ感と音の早さが特長でしたし、現在さまざまなスピーカーを聴いた今となっては、その早さは見せかけに過ぎなかったように思えます。 JBLの再生音がなぜ早く聴こえるか、それは音の一つ一つをシャープな刃物がごとく研ぎ澄まされ、音のファーストアタックがはっきりと提示されるために、音にアクセントが強く加わる手法をとった結果に過ぎません。 これは人間の生理的な反応にアピールします。 リスナーに音の形をはっきりと認識させるため、このように音を提示すると聴き手は音の早さを感じ、凄い!と思わず感動してしまいます。 JBLの手法が好評だったのは、我国のスピーカーが本当にだらしなかったからでした。ドラマーがドラムをたたくとき、空気の動きが聴こえるというJBL伝説がまことしやかに流布された時代でもありました。 JBLの術中にすっぽりとハマった結果の伝説。思いこみ以外の何物でもなかったのです。 当時のハイ・フィデリティがどのようなものであったか、おおよそ理解いただけたかと思います。 70年代我国のオーディオ中興期、サウンド重視こそがHi-Fiオーディオであるとの思い込みに終始しました。 今日にいたっても、主流はこの道であり続けるがために、オーディオ産業は衰退していったと言っても過言ではないでしょう。 一体に、家族、いや奥方様ひとりでも、あなたオーディオルームに自発的に乱入して『ねえ、あなたのレコード聞かせてよ』とせがまれた方は、どれだけいたのでしょうか。 音楽を楽しむためのハイ・フィデリティと音を楽しむためのハイ・フィデリティの相違が何をもたらすのか、数年からユーザー側とオーディオ関係者側との乖離は始まっているのです。 現在、オフィスでは古いガラードのオートチェンジャーとちっちゃな英パイ社製アンプ、タンノイ社製可搬型のスピーカーからディートリヒの唄が、けぶって低く流れています。 P21803681940年代後半の製品でHi-Fi仕様というよりも電蓄の延長線上といったところ、その再生音は、あらためて聴くと、グッドリプロダクションそのもの。 ジャズ・クラシックに限らず、45回転のポップスやスタンダードまで、老若男女誰でも、おや、と耳を傾けて聞いてくれます。 驚きのあとに微笑んで。 レコードをサウンドとして楽しむことこそオーディオであると信じ続けてきた耳には痛打の連続になるはずです。 以上T氏


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